上げ幅が一時700円を超えた日経平均株価を示すモニター=15日午後(写真:共同通信社)
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(白木 久史:三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト)

 私ども三井住友DSアセットマネジメントでは新NISA(少額投資非課税制度)がスタートして約1年が経過したタイミングで個人投資家や金融機関を対象に大規模なアンケートを行い、その調査結果を「新NISA白書」としてこのたび刊行しました。

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 税制面でのメリットが大きい新NISAは今や個人投資家の資産運用には欠かせない存在となっていますが、この「新NISA白書」を読む中で気づかされるのは、ヒトの神経を逆なでする「相場という心理戦」との付き合いの難しさです。

 例えば、足元では日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が約1年ぶりに史上最高値を更新するなど日本株は急激に上昇していますが、相場の過熱感や経済の先行き不透明感、そして、企業業績への不安からこの「上昇相場」に乗り切れていない投資家も少なくないようです。

 そこで今回は、「新NISA白書」から浮かび上がる投資家が陥りがちな「3つの残念な取引」と、その回避策について考えてみたいと思います。

心理的なクセや弱みに付け込む「ダークパターン」

 ネット通販で偶然気に入った商品を見つけた時に「品切れ間近」と購入を急かされたり、購入した際に知らないうちに定期購入を組まされてしまったり、といったような経験がある方はいないでしょうか。そんな消費者を誤った行動に誘導する仕組みは「ダークパターン」と呼ばれ、被害額は日本だけでも年間1兆円を超えるそうです。

 ヒトの心理的なクセや弱みに付け込む「ダークパターン」はネットの世界だけでなく、リアルの世界でも数多く存在すると感じている方も少なくないでしょう。中でも、時々刻々と変化する価格がヒトの「興奮」、「落胆」、「恐怖」などの感情を掻き立てる相場の世界は、ヒトの心理的なクセや弱さが判断ミスを招く、広い意味での「ダークパターンの宝庫」と言えそうです。

 そして、投資家を残念な取引に引き込む「ダークパターン」が要注意なのは、ネット通販での変な買い物とは比べ物にならないほど、その経済的なダメージが大きくなる可能性が高いからです。