日本株は本格的な上昇トレンドへ?(写真:AP/アフロ)
(白木 久史:三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト)
7月22日に日米関税交渉が急転直下で決着したことを受けて日本株は大きく上昇しました。東証株価指数(TOPIX)は7月24日にほぼ1年ぶりに史上最高値を更新し、日経平均株価(日経平均)も高値更新が目前に迫ってきました。
この1年あまりの相場を振り返ると、昨年8月の「令和のブラックマンデー」や今年4月の「トランプ関税ショック」など、「目もくらむような調整」を凌ぎながらのレンジ取引が続いてきました。しかし、関税交渉の早期決着という「ポジティブサプライズ」をきっかけに、相場は上放れ(うわばなれ)しつつあるように見受けられます。
そこで今回は、日米交渉の顛末やその内容を確認しつつ、今後の日本株の展開や取引レンジが切り上がった場合の相場の「上値めど」について考えてみたいと思います。
自称「ディールの天才」の面目躍如
今回の日米関税交渉については、関係筋の話として7月中旬には日米間で大筋合意していたと報じられています。しかし、トランプ大統領は参院選直前まで「日米通商交渉合意の可能性は低い」などと日本への不満表明ともとれるコメントを連発し、更に、日本の相互関税を24%から25%に引き上げるとの書簡を送付して内外に交渉の不調を印象付ける態度に終始しました。
しかし、7月20日の参院選での連立与党の大敗が確定すると、間髪を入れずに赤澤大臣を米国に呼びつけ、さらに、予定外のベッセント財務長官やトランプ大統領との「直接交渉」をセットし、一気に日米交渉をまとめて見せました。
今回の関税交渉の決着により、日本に課される相互関税は書簡で事前通告されていた25%から15%へ引き下げられ、自動車の関税も27.5%から15%へ引き下げられることとなりました。一方、日本は①自動車や農作物の市場を開放し、②米国製防衛装備品や航空機の購入を拡大し、さらに、③5500億米ドル(約80兆円)の対米直接投資を約束することとなりました。