2025年3月22日、スノーボード世界選手権、女子パラレル回転で優勝の三木つばき 写真/AP/アフロ
(松原孝臣:ライター)
2026年2月より開催されるミラノ・コルティナオリンピック。各種目の魅力とともに、活躍が期待される選手をライターの松原孝臣さんが取材。今回はスノーボード・アルペンの三木つばき選手を紹介します。(全2回)
●スノーボード・アルペンの三木つばきインタビュー(前編)はこちら
19歳からコーチが不在
「スノーボードがしたい」
その一心で、現在は22歳、日本体育大学4年生の三木つばきは、小学3年生から6年生まで、冬季に親元を離れてスキー場近くに滞在し、スノーボードに打ち込んだ。
その成果は大会の結果に表れ、小学6年生でプロスノーボーダーに。中学3年生でワールドカップに初めて出場すると、高校3年だった2022年には北京五輪に出場、9位の成績を残している。
昨シーズンの活躍は圧巻だった。ワールドカップではパラレル大回転、パラレル回転の2種目計17戦で4度の優勝を含め13度表彰台に上がり、総合優勝を果たした。世界選手権では五輪種目のパラレル大回転で銀メダル、非五輪種目のパラレル回転で金メダルを獲得。
順調に階段を上がってきた三木には意外な事実がある。19歳からコーチが不在であることだ。自ら考え、分析して練習する中で成績を伸ばしてきたのである。
きっかけは2022-23シーズンの開幕前にあった。
「ナショナルチーム活動がなくなります」
競技団体のスノーボードアルペンチームミーティングで告げられたのである。
「試合は現地集合、現地解散。練習や遠征は各選手個人に委ねられました。コーチを雇うにも金銭的にすごくかかってしまうし、セルフでやろうと思いました」
「セルフでやろう」、それは自らコーチを兼ねることを意味する。その上で成長できたのは、自分を客観視できる力と、練習をはじめ自分をコントロールする力があるからにほかならない。
三木自身はこのように自己分析する。
「中学1年、2年生の頃に指導を受けていたコーチと、毎日ミーティングをしていました。そのコーチから『僕が言うだけじゃなく、もっとディスカッションしていこう』と言われて、少しずつ考えるようになっていったり、他の選手の滑りも見るようになったりしました。15歳からはワールドカップに出ていますが、そこでは別のコーチにお世話になることが多かったんですね。すると『言っていることが違うな』とか、道具のセッティングについてアドバイスをもらっても『なんでだ』と感じたり。そこから自分の技術、道具、いろいろなことを考えるようになったことがセルフコーチングにつながっていると思います」
自身をコーチとしながら成績を残してくることができたのは自信になっていると言う。その上でこう語る。
「自信もつく一方で、昨シーズンが始まる前は少し不安もありました。いい意味でも悪い意味でも脳みそが一個なので、迷わないんですけど、間違った道でもなかなか気づけない、これが正しい道なのか、行き詰まったときどうしたらいいのか難しいときがありました。それで練習期間の1カ月間、お世話になっていたコーチに帯同してもらいました。他の方からのアドバイスをもらうのも大事なときもあるなって思います」
その気づきもまた、自己を把握する力の表れと言える。