コングロマリットこそGAFAMの原動力

  過去30年、戦後の財閥解体から始まる「選択と集中」という誤解された経営戦略の下で、日本企業のスケールが弱小化していった一方で、ヨーロッパやアメリカでは巨大企業グループの隆盛とコングロマリット化が加速している。

 アメリカの今世紀の経済を牽引してきたのは、GAFAM、すなわち、Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon、Microsoftといった巨大テック企業である。GAFAMは、テクノロジー業界で圧倒的な影響力を持ち、時価総額は5社合計で10兆ドル超と、これだけで日本の上場企業全体の時価総額を大きく上回っている。

 また、GAFAMは過去30年間で約750社の企業買収・合併(M&A)を行っている。そこには、リンクトイン(マイクロソフト、買収額262億ドル)、ワッツアップ(フェイスブック、220億ドル)、ユーチューブ(グーグル、17億ドル)などの著名企業が多く含まれており、これがGAFAM全体の時価総額を大きく押し上げている。

 つまり、多角化やM&Aによってコングロマリットを形成するという経営手法こそが、GAFAMを世界的企業グループに成長させてきたと言えるのである。

サラリーマン経営者が率いる100年企業の多い欧州

 これに対して、ヨーロッパの時価総額大手企業のほとんどは、いわゆる「100年企業」である。これら長寿企業グループは、国内だけでなく外国企業との統合により時価総額を拡大させ、自国経済の牽引役となっている。

 その際、本業や専業にこだわらず、新しい事業を付加させている点に特徴がある。しかも、その経営を担っている経営者の多くが、いわゆる「サラリーマン経営者」である。

 日本で大企業の変化速度が鈍いのは、オーナー企業ではないせいだと言われるが、ヨーロッパの例を見れば、それが都市伝説や単なる言い訳に過ぎないことが分かる。ヨーロッパでは、多くの長寿企業がサラリーマン社長に率いられ、大幅な改革と企業価値の成長を成し遂げている。