教員による性暴力からどうやって子どもを守るか
それにしても、いかに教育現場で「教員不足」が叫ばれていようとも、児童を性的対象とみるような歪んだ性癖を持つ人間を教壇に立たせるなど、親の立場にしてみれば断じて許せるわけがない。
どうしたら子どもたちを、悪質な教師から守れるのか。
2022年4月から「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(わいせつ教員対策法)が施行された。そこでは、子どもへのわいせつ行為や性交、児童ポルノの所持・製造、盗撮などが教員らの禁止行為と明記されている。また同法により、児童生徒への性暴力を理由として教員免許を失効した者、取り上げられた者のデーターベース化も始まった。
だが対策はまだ十分ではない。
文科省が調査・公表している公立学校教職員の人事行政状況によれば、「教員に性暴力防止法」施行前の2021年度に児童・生徒などへの性犯罪・性暴力などで懲戒処分を受けた教職員は94人、そして「わいせつ教員対策法」が施行された2022年度は119人、さらに2023年度は157人と、近年は増加傾向にある。数字から見れば、児童生徒への性暴力を防止する対策は、まだ十分とは言えない。
ちなみに、この文科省がまとめている教職員の人事行政状況調査では、どのような場面で児童生徒への性暴力が行われたのかも報告されている。
2023年度の公立学校教職員による「児童生徒性暴力が行われた場面」は、「授業中・保育中」6.4%、「放課後」19.2%、「休み時間」8.3%、「部活動」3.8%、「学校行事」0.6%、「通勤時間中」1.9%、「長期休業期間中」5.1%、「その他勤務時間外」54.5%となっている。
授業中にも性暴力が行われているという実態には、愕然とせざるを得ない。
26年12月からは、「こども性暴力防止法」が施行、教職員だけでなく子どもと接する職業従事者についても、採用時などに性犯罪歴の確認を義務付ける「日本版DBS」の運用が始まる予定になっている。これは塾や習い事の講師や放課後児童支援員らも想定されている。
確かに性暴力の「再犯」に関しては、DBS性犯罪の前科を持つ者を教育関連の現場から遠ざけられることで、新たな性暴力の防止につながると期待されている。だが、「初犯」対策としては、教員の研修、危険の早期把握のための児童等との面談、児童が相談を行いやすくするための措置などとなっており、実効性を上げるには現場の運用次第という面がありそうだ。
教員による性的犯罪が後を絶たない現状を鑑みるに、これらの措置だけで児童が安心して学校に通えるようになるとは考えにくい。
ではどうすれば子どもを教員による性犯罪から守れるのだろうか。
前出の母親が言うように、学校中にくまなく防犯カメラを設置して、教員の行動を監視するといった対策も、もしかすると検討するしかないのかも知れない。聖職者とも呼ばれる教員が、その職場である学校で常にカメラで監視されるというのは、考えただけでディストピア的世界であるが、それだけ教育現場が子どもや保護者にとって信頼しにくい状況になっているのも、また事実なのである。