減税・給付金は年中行事に

 2010年代までは危機時に大型財政という形であったが、2020年以降は、平時でも補正、減税、給付金が年中行事化している。とりわけ、昨年4月前後以降の超長期金利上昇と財政リスク懸念の高まりの連動は、市場が財政リスクに敏感に反応し始めたことを示しており、今までとは異なる局面に入ったようにも見える。

 物価高騰で実質賃金が上がらない中で、国民生活を支えるために減税、給付や年金かさ上げなどが議論されるのは当然であろう。また、国民生活の安定を図るために必要な政策も数多い。

 しかし、世界最悪の財政赤字の下で、これからの財政赤字拡大が我々の生活を良くするどころか悪化させかねないことも、いよいよ覚悟しなければならない。

中島 厚志(なかじま・あつし) エコノミスト 1952年生まれ。東京大学法学部卒。日本興業銀行(現・みずほ銀行)入行後、パリ支店長、パリ興銀社長、執行役員調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員、独立行政法人経済産業研究所理事長、新潟県立大学教授などを経て、現在、公益財団法人日仏会館理事長、経済産業研究所コンサルティングフェロー。著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社、2017)ほか。 ◎Wikipedia