相互関税を発表するトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)
(中島 厚志:エコノミスト)
アメリカの関税交渉では、トランプ大統領が好むディールに世界中が振り回されている。その帰結は未だ見えないが、一番不利益を被るのはアメリカの消費者である。輸入に関税がかかることで、輸入品の価格が上昇し、インフレにつながる。
国際通貨基金(IMF)が4月に発表した世界経済見通しでも、関税引き上げはアメリカにインフレをもたらし、消費や投資の鈍化が見込まれるとしている。その上で、アメリカの成長率の減速が主要国中最大になると予測している(図1)。

他方、関税引き上げは、販売価格引き上げや売上高減少とならざるを得ない海外企業にも打撃となる。トランプ関税の悪影響を少しでも緩和しようと、一律の関税引き上げ前にアメリカへの輸出が増えたのは当然であった。
実際、トランプ大統領再選後の2024年12月から一律関税が課された25年4月の前の3月までの4カ月間で、アメリカでは駆け込み輸入が対前年同期の4カ月間と比べて23%増え、貿易赤字は66%も増えている。
このような4カ月間でのアメリカの輸入増は、いままでと比べても大きい。特に、貿易赤字の増加率は統計を確認できる1956年以降最大で、4月の貿易赤字が3月比42%も縮小したことを踏まえると、今年3月にかけての駆け込み輸入がいかに異例だったかが分かる。
では、アメリカの輸入は、どのような国から、また、どのような商品で激増したのであろうか。
