米国の駆け込み消費で輸出を激増させた国は?
直感的には、中国やドイツなど、アメリカが大きな輸入と貿易赤字を抱えている国々が思い浮かぶ。商品では、アメリカの人々にニーズが強く、しかも値段がそう高くない商品ということになろう。
しかし、実際はそうではなかった(図2)。24年12月から25年3月までの4カ月間(以下同)で、アメリカのドイツからの輸入増は6%、貿易赤字は11%増となっており、アメリカ全体の輸入と貿易赤字全体の増加率に比べれば大きくない。

アメリカに日用雑貨品や玩具、PCや家電製品などを大量に輸出している中国もドイツとあまり変わらない。中国が対米駆け込み輸出を抑制したとの見方もあるが、アメリカの中国からの輸入増は6%、貿易赤字拡大は16%にとどまっている。
アメリカが輸入を大いに増やし、貿易赤字を激増させた国はどこか。筆頭はスイスやアイルランドであり、欧州連合(EU)である。特に、スイスに対するアメリカの貿易赤字は12.4倍に達した。地域で見ても、アメリカの貿易赤字は、EUに対して8割増となっており、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の4割増よりも大きい。
こうなると、関税引き上げによる値上がり前に、アメリカの人々や企業が是が非でも購入しておかねばならなかった商品は、中国やドイツ、ASEAN諸国もさることながら、スイスやアイルランド、そして、アイルランドが加盟国であるとはいえ、EUにもあったということになる。
では、アメリカの消費者は、スイスやアイルランドから何を大量に購入したのだろうか。