ブランチ・リッキーはのちにドジャースのGMとなり、第二次大戦後に黒人選手ジャッキー・ロビンソンをMLBでプレーさせたことで知られるが「ファームシステムの構築」は、それと並ぶ偉大な功績だった。

 こうした経緯からわかるように、MLBの「マイナーリーグ」は、別個の経営者がいる独立したチームであり、球団とは「アフィリエイト(提携)契約」を結んでいる。

「育成」とは言っても基本は自力で這い上がるのがメジャー流

 MLBはドラフトなどで獲得した選手を、こうしたチームに送り込み、試合経験を積ませる。マイナーリーグのチームは、選手の年俸は「親球団持ち」だが、試合興行を独自に行い、独立採算で運営されている。

 ただ一番下のランクのルーキーリーグだけは球団直営になっている。

 また「アフィリエイト契約」が切れて、他球団のマイナーリーグチームになることも珍しくない。

 2019年まで、MLB傘下のマイナーリーグは17リーグ215チームもあったが、MLBは新型コロナ禍を機に大胆なリストラを敢行し、2021年には13リーグ156チームに削減した。

 従来、メキシコ国内リーグのメキシカン・リーグはMLBと提携しAAAとされたが、この時にアメリカから見れば「独立リーグ」になった。

 MLBとの関係を打ち切られたマイナーリーグチームの中には消滅したものもあるが、独立リーグとして存続しているチームもある。

 かつて、MLBのドラフトは1球団50人、全体で1500人も指名していた。現在は20人、全体で600人となっているが、これに加えてドラフト外選手、ドミニカ共和国などの外国人選手などが毎年、マイナーリーグに身を投じる。同じだけ戦力外になる選手もいるが、そうした激しい新陳代謝の中で、マイナーリーガーたちは熾烈な競争をしている。

「育成」と言ってもMLBのファーム組織は選手をコーチが手取り足取り指導するわけではない。コーチは聞かれればアドバイスはするが、選手はシーズン140試合という多くの試合に出場する中で、結果を残して這い上がるしかない。