根鈴雄次氏(筆者撮影)

「根鈴(ねれい)雄次」という野球指導者の名前は、近年、かなり知られるようになった。

 MLBでは「フライボール革命」という打撃理論が主流になっている。大谷翔平はその代表格だが、根鈴氏はそれを技術レベルで指導できる日本では稀有な指導者なのだ。

ホームランを狙って打つスイング

「フライボール革命」は、アメリカでセイバーメトリクスなどデータ野球が進展する中で起こった。

 トラックマンなどの「弾道計測器」が試合で使われるようになって、試合中の投球、打球のあらゆる動きが捕捉され、数値化されるようになった。

 特に各打者の打球の方向は、統計学的にまとめられた。守備側はその打者の打球が「最も飛んできやすい位置」を事前に知って、その位置に集中的に野手を配置するようになった。これを「極端な守備シフト」という。

 このため、多くの打者が成績を落とした。イチローや、デビッド・オルティーズなどの殿堂入りした打者も影響を受けたとされる。

 そこで、打者側は野手が絶対に手が届かないエリア(フィールド外)までボールを飛ばそうと考え、打球を打ち上げ始めた。データ上では、打球速度158キロ以上、角度26~30度でボールを飛ばせば、安打、ホームランになる可能性が高まる。これを「バレルゾーン」というが、これに基づいて打球を打ち上げるとともに、スイングスピードを上げ打球速度をアップさせてホームラン、安打を量産しようというのが「フライボール革命」だ。