「エリートコース」以外にも道はいくつもある

 根鈴氏は「フライボール革命」の伝道者であるが、同時に野球で生きる「別の選択肢」を示す「水先案内人」でもある。

 従来、日本では「野球で生きていく」とは強豪高校→甲子園→プロ、あるいは大学という一本道のルートしかなかったが、今では、MLBや世界の野球という選択肢もある。

 根鈴氏は単身MLBに挑戦し、AAAまで昇進した。その後はアメリカや世界、日本の様々なリーグを渡り歩いてプレーをした。

 そんな根鈴氏のもとに「日本の高校、大学に行かずに直接アメリカを目指したい」という選手から相談が持ち掛けられるのだ。根鈴氏は世界に挑戦するために必要な準備、心構えについて話すとともに「勇気を持って挑戦しよう」と背中を押す。

 毎年12月に沖縄県で行われるジャパンウィンターリーグは、日本、世界のプロ野球を目指す選手の「登竜門」でもあるが、根鈴氏は講師として招かれ、選手にチャレンジすることで広がる可能性について話している。ここでも「勇気をもって世界へ!」と話している。

ジャパンウィンターリーグで選手に話す根鈴氏(筆者撮影)

 近年、日本のプロ野球を経ずにMLBに挑戦する選手が増えている。スタンフォード大でプレーする佐々木麟太郎もその意向だと言われる。

 根鈴氏が先陣を切った「自分の能力で自身の可能性を拓く」道を、続々と有為の若者が歩くようになった。実は根鈴氏の長男も今、アメリカの高校で野球をしている。

「昔の日本では野球で生きていくのは、エリートコースしかなかったんです。今は自分の才覚があって、やる気があれば、いろんなところで野球ができる時代です。みんなチャレンジしてほしい」