
記録について書くことが多い筆者は多くの雑誌やウェブメディアから「大谷翔平」についての寄稿やデータ提供の依頼を受ける。イチローもそういう時期があったが、その頻度、量において、大谷ははるかにそれを凌駕する。
また大谷は、水原一平通訳の背信行為から結婚、出産とプライベートも含め話題にも事欠かないのだ。
「誰も成し遂げたことがないこと」を次々にクリア
今季大谷は前年よりも少し長いバットを使うことにした。それもあってか3、4月は打球速度が遅かった。ホームランは出ていたが打球の最高速は184km/h程度。MLB全打者での順位も十数位程度。毎年のように190km/h超の打球を打って5指に入る数字を叩きだしていたから、物足りなかった。
また大谷はホームランを広角に打つ。バットスピードが速いから多少振り遅れても左翼スタンドに飛び込むことがよくあったのだ。しかし3、4月の大谷の本塁打はほとんどが右翼、右中間だった。
さらに言えば3、4月は本塁打こそ7本打ったが、打点はわずかに10。1番打者は1試合で必ず1回は無走者で打席に立つから打点が多少減るのは仕方がないが、それでも昨年は1番で90試合に出場して35本塁打84打点を稼いだ。そのペースなら25打点を稼いでいなければいけないが、たったの7点。これはおかしいのではないか?
そんな記事をいろんなメディアに発信してきたが、5月になると大谷翔平はドミノ倒しのように、次々とこうした懸念を払しょくしていった。
まず5月6日のマーリンズ戦で大谷は今季MLB最速の189.7km/hのホームランを打った。さらに5月20日時点で、大谷は5月も1番に座りながらア・ナ両リーグ最多の21打点を荒稼ぎしている。そして5月の10本塁打のうち、左中間に1本、左翼に1本と反対方向へも本塁打が出るようになったのだ。
大谷翔平は、筆者のような「大谷ウオッチャー」のはるか上のレベルで野球をしているのだろう。