大谷は2022年には投手として規定投球回数、打者として規定打席をクリア。1901年にア・ナの二大リーグ制になって以降、MLBでこの2つの基準を同じ年にクリアしたのは大谷翔平だけだ。

 それ以上にすごいのは、打者大谷はMLBに来てから「大型化」したことだ。

MLBで「小型化」しなかった大谷

 NPB時代の最多本塁打は2016年の22本。2018年、MLBに移籍した大谷は2021年には46本塁打と松井秀喜が持つ日本人選手最多の31本を大きく上回った。

 さらに、23年に44本、24年に54本と2年連続で本塁打王をタイトルを獲得。

 NPBでは屈指のスラッガーだった選手が、MLBで小型化し、下位打線を打つのを数多く見て来た野球ファンにとって、大谷の大活躍には愁眉を開く思いがしたものだ。

 端的に言えば、大谷翔平は「MLBに来て進化した」のだ。これも史上初めてだと言える。2020年オフに、シアトル郊外にあるトレーニング施設「ドライブライン」を訪れて自身の投打のデータを数値で把握し、バイオメカニクス(生体工学)的なフォーム改造を行ったのが大きいとされる。これまで日本人選手が誰も成し遂げられなかった快挙は、こうした「自ら学び、進化する」姿勢の賜物ではあろう。

 大谷は「MLBではNPBの打者は小型化する」とされた「限界」を打破し、新たな進化への道筋を指示したのだ。

 2023年WBCの侍ジャパンで大谷とチームメイトになった日本人選手の中から、山本由伸、今永昇太、佐々木朗希とメジャーリーガーが出た。また村上宗隆や岡本和真もMLB挑戦を公言している。大谷の存在は、有為のNPB選手の背中を押すのだろう。

 MLBでは元レイズのブレンダン・マッケイ、パイレーツのポール・スキーンズのように大谷に続いて一時は「二刀流」を志した選手がいたが、誰も成功していない。

 そしてNPBでは大谷同様、打者として「大型化」を目指す選手がいるが、カブスの鈴木誠也に多少兆候があるものの、成功したとまでは言えない。大谷は「これまで誰もやっていないことに挑んで大成功している」という点で「歴史的」な存在なのだ。

 我々は同時代に生きて彼の活躍を見ることができる幸運をかみしめるべきだろう。