長く野球選手を追いかけている筆者だが、大谷翔平のような選手は見たことが無い。
イチローも異能の選手で、2004年、MLBのシーズン安打記録257本を更新する262安打を打った時も、特に9月後半の打席は神がかっていた。確かにすごかったと思うが、大谷は記録的にすごいというより「今まで誰もやったことが無いことを、いとも簡単にクリアする」という点で、超越した存在だと思う。
二刀流に関してはベーブ・ルースより大谷の方がはるかに上
大谷翔平は歴史的にはどんな評価になるのだろうか?
よく彼と比較されるのは、1920年代、ホームラン記録を次々と更新したベーブ・ルースだ。
ルースは当初、レッドソックスの左腕投手としてメジャーデビューしたが、打者としても驚異的な成績を上げるようになった。このベーブ・ルースを、投打で大活躍する大谷翔平の「二刀流」の元祖だとして、比較する論調が盛んになった。

筆者もそうした記事を書いてきたが、実際のところ釈然としない思いがあった。というのも、ベーブ・ルースは「二刀流」をやりたいと思ってしていたのではないのだ。
投手としてエース級の活躍をしつつ、たまたま打席でも安打、ホームランが出たから代打などで起用されたのだが、ルースが打者・投手両方で活躍したのは、レッドソックス時代の1915年から19年の5年間にすぎない。
1920年にヤンキースに移籍してからは15年間で5試合に登板しただけだ。ルースはいわば「投手から野手へのコンバート」の移行期間の5年間だけ投打で活躍したに過ぎない。
これに対して大谷は自ら「二刀流」を志願し、故障しない限りそれを続けてきた。MLBは彼の意志を追認し、新たにTWP(Two Way Player=二刀流)というポジションさえ新設した。今のところTWPは彼一人だ。