「とにかく硬球をパカーンと打てる施設を」
その後、根鈴氏は、アメリカ、メキシコ、カナダなどの独立リーグ、日本の独立リーグでもプレー。オランダでは「外国人選手」としてプレーした。引退後は、独立リーグのコーチなどをつとめたが、2017年、故郷の横浜市に「アラボーイベースボール 根鈴道場」を開く。

これまでも「野球塾」「野球教室」などはたくさんあったが、根鈴氏の「道場」は、そうした施設とは一線を画するものだ。
根鈴氏は「打撃」それも、日本流ではなくMLB仕込みの「バッティング」を専門に教えるのだ。
筆者は根鈴氏が「道場」を開設した当初から訪れているが、この施設そのものが、他の「野球教室」とは全く異なっていた。
周囲は住宅が立ち並ぶ田園地帯。その一角に、ネットで囲まれた四角い施設がある。中にはホームベースとネット、バッティングのティーがあるだけ。普通の野球教室ならあるブルペンや室内練習場などはない。

根鈴氏は、ゴルフの練習場やサッカーのフットサルの施設をヒントに、この施設を自分で設計した。根鈴氏は語る。
「引退してから、公園で硬球を使ってキャッチボールをしようとしたら、周囲の人が飛んできて、危険だからやっちゃダメという。今の日本は公園でボール遊びなんてできないんですね。でも一方で、野球教室に子供を連れてくる親御さんは、遊びじゃなくて“真剣に野球を学ばせたい”という。僕らの頃とは時代が変わったんだと思いましたね。
僕は、とにかく硬球をパカーンと打てる施設を作ろうと思った。天井を作らなかったから雨が降ったら濡れる。でも、雨が降ったら野球はやらないわけだからそれはそれでいい。
施設を大きくする気もないから、スタッフもいらない。自分ひとりで、じっくり打撃を教えようと思った。今の日本のやり方ではMLBでは通用しない。アメリカや世界で通用する『打撃』を日本の選手たちに教えようと思ったんですね」