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(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 昨年2024年は、政治においてSNSの力を見せつけたという意味では、「SNS元年」だったといっていい。

 最初にその威力が発揮されたのは、7月の東京都知事選のときだった。海のものとも山のものとも知れぬ、広島県安芸高田市前市長の石丸伸二が立候補した。

 かれは、前立憲民主党の蓮舫(得票率18.8%)を抑え、当選した小池百合子知事(同42.8%)に次いで、2位の票(同24.3%)を獲得したのである。

2024年の東京都知事選立候補予定者の共同記者会見をする(左から)石丸伸二氏、小池百合子氏、蓮舫氏、田母神俊雄氏(2024年6月19日、写真:共同通信社)

「SNSの勝利」を追いかけまわしたマスメディアの凋落

 石丸の躍進を支えたのが、無党派層へのSNS戦略ということでマスコミは沸き立った。テレビは連日、石丸を追いかけまわした。

 そのSNS戦略を学び、同年10月に行われた衆議院選挙で、その力によって大躍進を遂げたのは玉木雄一郎代表の国民民主党である。

「手取りを増やす」という公約のわかりやすさももちろんあったが、選挙前の7議席を4倍の28議席にまで伸ばし、SNSの大勝利といわれた。

 それに比べて一気に信頼を失ったのは、テレビや新聞(ラジオや雑誌も)といった旧来のマスメディアである。

 旧態依然とした古い価値観から一歩も抜け出せないそれらは、オールドメディアと揶揄された。

 とくにひどいのはテレビだ。

 ゴシップやスキャンダルにはハイエナのように食いつくが、国や社会のややこしい重要問題は体よくスルーする。ニュース報道も娯楽と捉え、つまらぬニュースだけは垂れ流して、肝心のニュースは報じない。

 なにをするにも視聴率第一で、横並び。莫大な広告費の上にあぐらをかいていて、尊大。そのくせ、いざとなると我が身大事の保身に走るだけで、なんの役にも立たない、という化けの皮がはがれたのである。

 テレビは芸人と一緒にクイズ番組やバラエティだけを作っていればいいのだ。報道機関が聞いて呆れる。

金儲け野郎の増殖が目障りなYouTube

 だからといって、SNSがなんでも素晴らしいかというと、あたりまえのことだがそんなことはない。