金権政治とポピュリズムの融合「プルート・ポピュリズム」

 英紙フィナンシャル・タイムズの首席経済コメンテーター、マーティン・ウルフ氏は金権政治とポピュリズムの融合、いわゆる「プルート・ポピュリズム」が現代の自由と民主主義に深刻な脅威をもたらしていると繰り返し警告している。

 2008年の世界金融危機と緊縮財政が政治不信とポピュリズムの温床になった。ウルフ氏によれば、富裕層・支配層は自らの権益や富を擁護するためにポピュリズムを利用し、文化・民族・人種などのアイデンティティー政治によって白人低所得者を中心に広範な支持を集める。

 トランプ氏は典型的なプルート・ポピュリストだとウルフ氏はいう。制度への不信や排外主義、人種分断を煽って「エリートvsノンエリート」の構図を演出し、トランプ氏は昨年の大統領選、上下両院選を制した。今、支持層の不満を晴らすように弱者の移民を排撃する。

 もはや米国の民主主義は異常という他ない。貿易戦争は製造拠点の国内回帰を促すためだと強調したところで米株価指数S&P 500が20%超急落するとすぐに矛を収めた。トランプノミクスの本質はやはり規制緩和や減税の企業、富裕層優遇策と言えるだろう。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。