ロンドン公演で熱唱するビヨンセ(6月10日、筆者撮影)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

「カウボーイ・カーター・ツアー」のロンドン公演

[ロンドン発]音楽業界史上最も影響力のあるパフォーマーの1人、ビヨンセ(43)の「カウボーイ・カーター・ツアー」のロンドン公演(6月5~16日)がロンドンのトッテナム・ホットスパー・スタジアムで行われている。筆者も10日、妻とビヨンセの歌と踊りを楽しんできた。

 ビヨンセの8枚目のスタジオアルバム『カウボーイ・カーター』は第67回グラミー賞で最多11部門ノミネート、最優秀アルバム賞、最優秀カントリーアルバム賞を含む3部門を受賞。これまで南部の白人音楽と認識されてきたカントリーミュージックにおける黒人のルーツに光を当てるため今回のツアーが企画された。

 ヒューストンで生まれ育ったビヨンセはカウボーイの伝統とカントリーの影響を受けた。2016年に初のオリジナルカントリーソングをリリースしたのだが、一部のカントリーファンに拒絶された。これをきっかけにビヨンセはカントリーにおける黒人のルーツを調べた。

 米紙ヒューストン・クロニクル(21年8月6日付)によると、西部劇に黒人カウボーイは登場しないが、19世紀初頭、推定でカウボーイの4人に1人が黒人だった。米国黒人史の研究者は、カウボーイは南北戦争後、非白人男性にとって数少ない職業の1つだったという。