株価の反転とともに回復するトランプ支持率
4月初旬にトランプ関税が発表されたことで世界の金融市場が混乱し、消費者のセンチメントや企業の景況感といった「ソフトデータ」が急速に悪化する中、トランプ大統領の支持率が急落した際には、世界の報道機関がこぞって大きく報じました。
私たちは日本のメディアが流す「個性的」なトランプ像を目にして、不快感を覚える人が多いかもしれません。しかし、トランプ大統領のポリコレにとらわれない率直な物言いを誠実さの表れと感じ、「ワシントン流」に染まらない振舞いにむしろ好感を抱き、そして、アメリカ・ファーストのスローガンを愛国心や強いリーダシップの表れと捉える米国人が少なくないのも事実でしょう。
このため、私たちからすれば意外に感じられるかもしれませんが、トランプ大統領の支持率は足元では株式市場とともに回復傾向にあります(図表3)。
【図表3:トランプ大統領の支持率とS&P500種指数の推移】

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
もし、トランプ政権の経済政策による景気や株式市場への影響が今後も限定的なものに留まるなら、支持率の持ち直しを背景にトランプ政権が様々な形での「対中強硬策」をエスカレートさせていったとしても、決して不思議ではないでしょう。
「TACOトレード」は悪乗りすぎる
米国の株式市場では「TACOトレード理論」を地で行くようなリスクオンが進んでいます。しかし、関税以外の分野での米中対立の先鋭化を見るにつけ、トランプ大統領の一連の政策変更を「TACOトレード」と一蹴して、関税以外のリスクへの目配せがおろそかになっているとしたら、いささか悪乗りが過ぎるように思えてきます。
今後も、「想定外」の米国の強硬姿勢や中国側の反発などで、再び金融市場が揺さぶられる可能性は否定できないでしょう。このため、トランプ大統領の言動や政策について「フラットな視線」で見ていかないと、思わぬ事態に足元をすくわれることになりかねません。さらに、ここまで大きく戻してきた株式市場の水準と考え合わせれば、冷静な情報収集と分析が、より一層求められる局面に差し掛かってきているのではないでしょうか。
【まとめ】
▶︎金融市場では「TACOトレード理論」が話題になっているようです。通商政策で妥協を繰り返すトランプ大統領への悪意も感じられる一方、トレード戦略としては一定の成果を収めているようです。
▶︎トランプ政権は関税という短期の「戦術」が軌道修正を余儀なくされたとしても、中国の台頭を抑え込もうとする長期の「戦略」は不変と考えておくべきでしょう。そして、最近のトランプ政権の動向を見ると、対中政策はむしろ厳しさを増しているように思えてきます。
▶︎何かとお騒がせのトランプ大統領ですが、米国株の反転と歩調を合わせて支持率も回復傾向にあります。このため、「TACO(トランプはいつも逃げる)」などと高をくくっていると、思わぬ事態に慌てることになりかねないため、注意が必要でしょう。
※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
※個別の金融商品や銘柄を勧めるものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。