米政府が海外留学生に神経を尖らすワケ
ちなみに、留学生の比率が40%前後にもなるコロンビア大学と比べれば、ハーバード大学の留学生比率はスタンフォード大学やイエール大学とほぼ同水準の約25%に留まるとされています。また、絶対数が最も多いとはいえ、留学生全体に占める中国出身者の割合は約21%に留まります。
こうした数字を冷静に見れば、トランプ政権による一連の措置は、ハーバード大学やその留学生たちからすれば、とんだ「言いがかり」のようにも思えてきます。
とはいえ、トランプ政権がこうした強硬策を打ち出す背景には、厳しさを増すトランプ政権の対中姿勢に加え、AIなど先端分野で存在感を高める中国への警戒感や危機感がありそうです。2022年には米連邦捜査局(FBI)と英国家情報局保安部(MI5)のトップが共同記者会見を開き、中国政府がさまざまな手段を駆使して西側諸国に対するスパイ行為を活発化させていると告発しています。
そして、会見の中でMI5のマッカラム長官は「過去3年間で50人の中国人留学生が中国軍と関連したスパイ容疑で追放された」と公表しています。また、直近でも、5月28日にルビオ国務長官は、「中国共産党とつながりのある中国人留学生のビザの取り消しを積極化する」と発表しています。
こうして見ると、トランプ政権がハーバード大学を目の敵にしているように見えるのは、エリート層への反感や行き過ぎたポリティカル・コレクトネス(政治的な妥当性のこと、以下、ポリコレ)への反発もさることながら、米国の対中戦略や安全保障政策の観点から、米国の最先端の研究機関から中国人研究者・留学生を排除しようとする意図が背景にありそうです。