「爆食しなければテレビじゃない」なのか

 以前の当コラム「米不足なのに『爆食』を面白がる不埒なテレビ、制作者は本当に国民に必要な番組をつくっているのか」(2024年9月29日)で、「爆食」をエンターテインメントにするテレビの感覚を疑問視しました。同じ時間帯に、キー局が「爆食」をテーマにして競い合っていることには違和感しかありません。

 しかし、その違和感は払拭されるどころか、深まるばかりです。5月11日(日)から17日(土)の1週間、民放キー局のゴールデンタイムのテレビ欄を調べてみました。すると、「爆食」や「爆盛り」など大食いに関する言葉が毎日、どこかの放送局で使われていました。

・11日(日):爆食
・12日(月):爆食
・13日(火):爆盛り、食べ放題
・14日(水):爆食、爆飲み
・15日(木):爆食、爆盛り
・16日(金):食べつくせ
・17日(土):爆食、食べまくり、超満腹

 もはや、「爆食しなければテレビじゃない」とでも言わんばかりです。少し前までは「グルメ」という言葉が多用されていましたが、それでは「おとなしすぎる」のか、今では「爆食」が定番になっています。

 こうした番組が成立するには、大食い自慢のタレントや素人が必要ですが、SNSで大食いの画像を配信して人気を博した人を発掘し、便利に起用しています。テレビとSNSの相乗効果で、大食いタレントは続々と誕生していくのでしょう。

 支えているのはタレントだけではありません。爆食番組の強い味方はスポンサーです。応援するスポンサーがあるから、放送局は堂々と、食べまくり・食べつくしの映像を公共の電波に乗せて、まるで「わんこそば」のように視聴者に届けているのです。

 スポンサーは一般的に商品を消費してもらうことで収益を得ています。だから、大量消費すれば収益が上がります。食品・飲料メーカーが、視聴者の食欲を刺激し、購買意欲を喚起する番組を歓迎するのは、企業の論理としては理解できます。

 しかし、「飽食」を謳歌すればするほど、企業が掲げるSDGsと矛盾している問題が浮き彫りになります。

テレビ局もSDGsを掲げているはずだが…(写真:metamorworks/Shutterstock.com)