(3)ドローンの製造能力
本項は、読売新聞「ウクライナ『国策』で無人機産業を育成…ロシアによる侵略3年で400万機生産可能に」(2025年2月23日)を参考にしている。
ロシアの侵略と戦うウクライナは、「国策」として無人機産業の育成に取り組んでいる。
約3年間に及ぶ戦いで、侵略開始前の約1000倍の規模に急成長したとの見方もある。
ゼレンスキー大統領は2024年12月31日、新年に合わせた演説で防衛産業による貢献を称えた。
攻撃型無人機と並んで名前を呼ばれた7種類の武器の一つが、偵察用無人機「GOR(ゴア)」だ。
航続距離は約260キロ。夜間撮影も可能な高性能カメラによる探知能力、電波妨害(ジャミング)への耐性が特徴だ。
GORは通信が妨害されると、自動的に利用できる周波数帯を探し、再接続する機能を備える。
機体が帰還する確率が高く、今ではあらゆる前線で使われている。
この3年間でウクライナの無人機の質は向上し、生産量は大幅に増えた。約2000キロに及ぶ長距離攻撃用の無人機で、露国内の軍事関連施設を攻撃している。
水上無人艇の開発も進んでおり、ロシアが一方的に併合した南部クリミアの周辺で、体当たりして自爆する無人艇がロシア軍黒海艦隊の艦船を何隻も沈めた。
このため、クリミア半島のセバストポリに司令部を置くロシア海軍の黒海艦隊はロシア南部のノボロシースクに拠点を移した。
ちなみに、ウクライナの情報機関・国防省情報総局は2025年5月3日、ロシア南部の黒海沿岸ノボロシースク近海で水上無人艇マグラを使った作戦を2日に実施し、ロシアの戦闘機「スホイ30」(2機)をミサイルで撃墜したと発表した。
情報総局は「海洋無人艇が戦闘機を撃墜するのは世界で初めて」と主張した。
(出典:共同通信「無人艇で『ロシアの戦闘機撃墜』黒海で、世界初とウクライナ」2025年5月4日)。
使用されたミサイルは、米国供与の「AIM-9サイドワインダー」空対空ミサイルの艦載型とされる。
ところで、キーウ経済大学などによると、2022年に年間4000機程度だった国産無人機の生産台数は2023年に約30万機となり、2024年には推計で約4000万機の生産が可能となった。
生産能力の向上には、ウクライナ政府が立ち上げた技術アクセラレーター「ブレイブワン(BRAVE1)」が果たした役割が大きい。
ブレイブワンは軍や国営企業と民間の調整、国内外からの資金調達に奔走した。
成長を見込む国外からの投資が増え、ブレイブワンによると、2024年の防衛産業スタートアップへの投資額は、約5000万ドル(約75億円)と前年の10倍に増えた。
ウクライナは今年、ドローンを400万機以上生産する見通しとなっている。それに占める国産品の割合は着実に増えていくだろう。
ウクライナのドローンは、戦闘においてロシアの損害の半分以上をもたらすようになっているだけに、このドローン生産はロシアに対する戦争遂行の要になりそうである。
ウクライナで生産されるドローンは戦後、ウクライナにとって重要な輸出収入源になるかもしれない。
ドローン生産能力をもたないほかの国々も、ドローン戦力の構築を急ピッチで進めようとしているからである。