AfDをどうするのか

 先述したように、移民や難民の流入に伴う治安悪化などの問題は、移民排斥をうたうAfDを躍進させている。AfDは、2013年に結成された右派政党である。その主張は、移民やイスラム教やEUに反対する排外主義である。

 5月2日、過激派対策機関である連邦憲法擁護庁は、AfDを極右団体に認定した。この政党が「自由民主主義的な基本秩序に反している」と判断し、監視対象にした。憲法擁護庁は、2021年に、チューリンゲンなど東部3州のAfD地方組織を極右団体に認定していた。

 今回の決定に伴い、AfDの政党活動を禁止すべきだという声も高まっている。ドイツ憲法によれば、政府、連邦議会(下院)、連邦参議院(上院)のいずれかの申し立てにより、憲法裁判所が認めれば、政党を禁止できる。

 しかし、AfD側は、憲法擁護庁の決定の差し止めを求めて、行政裁判所に提訴した。そのため、裁判所の決定が出るまで、憲法擁護庁は極右団体の指定を停止した。

 そもそも、1000万人もの支持者がいる政党を禁止することが現実的に可能なのか。

 この決定に対して、トランプ政権は反発している。イーロン・マスクは、熱心にAfDを支援しており、2月の総選挙にも介入した。バンス副大統領やルビオ国務長官も、今回の憲法擁護庁の判断を「偽装された専制政治」と批判している。

 民主主義は権威主義によって覆されるとともに、ポピュリズムによっても自壊していく。今、先進民主主義国で進んでいるのは後者であり、SNSがそれに輪をかけている。

 今後のドイツ政治の行方は、民主主義の未来を左右すると言っても過言ではない。

編集部註:公開当初「2014年にロシアがクリミアを併合したのをきっかけに」の部分を「2014年にロシアがウクライナを併合したのをきっかけに」と誤記していました。2025年5月11日23時27分、上記誤りを修正しました。