エピローグ/「慣性シナリオ」と「ストレスシナリオ」発表の真意は?

「油価はロシアの生命線」にて、「ロシア経済は油上の楼閣」です。

 欧米による対露経済制裁措置は効果大にて、油価低迷により国民福祉基金流動性資産残高は枯渇しつつあり、ロシアの継戦能力は今後、限りなくゼロに近づくでしょう。

 これは、プーチン大統領の権力基盤崩壊を意味します。

「ストレスシナリオ」によれば、ロシアの原油生産量は今後急激に低下して、2050年には原油輸出能力はゼロになるとの予測です。

「ストレスシナリオ」 は自壊する帝国の近未来の姿を描いており、ロシア政府はよくここまで正直に書いたなというのが筆者の偽らざる感想です(実際にはもっと悲惨な状況不可避)。

 対露制裁が解除されて欧米企業が再びロシア市場に戻らない限り、「慣性シナリオ」も実現困難です。

 今回の「2050年までの露エネルギー戦略」の隠れた真意は、優秀なるロシア政府官僚によるプーチン大統領に対する密かな警告ではないかと筆者は推測しております。

 ウクライナ戦況は一見ロシア軍有利に展開している模様ですが、油価が下落して戦費が枯渇しつつある現在、即時停戦を一番必要としているのは、実はプーチン大統領その人となります。

 彼が賢い指導者か暗愚な独裁者か、我々はもうすぐ答えを見出すことになるでしょう。