自主財源と政党助成金をめぐる改革の方向性
総じて、政党の財政を支える自主財源と公費助成は、それぞれに利点と難点とがある。
自主財源は、利点としては政党が寄付や献金、事業収入によって有権者と繋がり、市民社会に根付く。他方、難点として、資金力のある企業が過度な影響力を行使し、「金権政治(plutocracy)」を招く恐れがある。
他方、公費助成は、制度設計によっては政党の金権腐敗を防ぎ、政党の競争条件の公平さを担保しうる。しかし難点としては、政党の助成金依存を進め、政党を市民社会から乖離させる。
そうであれば、改革の方向性は、双方の難点を規制し、利点を促進する発想であろう。すなわち、政党の自主財源を強化・透明化させながら、公費助成を合理化・公平化させることである。
自主財源のうち弊害の大きな企業献金については、献金の受け手を政党本部と都道府県連に限るという提案を軸に、政治改革特別委員会での議論を急ぐべきである。あわせて、政党の助成金依存を緩和させるため、個人献金の促進が急務である。個人による政治活動への寄付につき、控除額を現行の30%から引き上げ、その適用対象も拡大すべきであろう。
次に公的助成、すなわち政党交付金については、各党に配分される交付金の上限を前年収入の2/3とする「三分の二条項」の復活や、交付上限額を一律に100億円までとするなどして、政党の過度な交付金依存を抑制していく必要がある。
また、与野党の競争条件の公平化をめぐり、政党交付金の配分基準を議員数から得票数に変えることも現実的な案である。
第一党が過剰代表される小選挙区制の下では、議員数に基づく配分は有権者の意思を正確に反映しておらず、むしろ比例区得票率に基づいて交付金を配分することが望ましい。
また、女性や若者など多様な属性の当選者に応じて政党交付金の傾斜配分する改革も、国会の活性化に資するであろう。
1993年の政治改革から30年の時を経て、今再び、直面する課題に向きあうエネルギーとスタミナを滾らせる時である。
参考文献
井上寿一『政友会と民政党』中公新書、2012年
R・カッツ、P・メア(岩崎正洋・浅井直哉訳)『カルテル化する政党』勁草書房、2023年
浅井直哉『政党助成とカルテル政党』勁草書房、2023年
濱本真輔『日本の国会議員』中公新書、2022年