撮影/村川 荘兵衛

(岡本ジュン:ライター)

仕事や出張の後、美味しいお酒と食事を楽しみたい…自分だけの贅沢な時間を過ごせる、間違いないお店をグルメライターの岡本ジュンさんが紹介する新連載。ぜひご期待ください。(JBpress)

鉄板が奏でる、おいしい音と香りに魅せられて

 カラリと引き戸を開けた瞬間から、ほっこりとした空気が漂っていた。「あれ、初めてなのになにかとても安心感がある」。それがこの店のファーストインプレッション。最初に訪れた日は、隣に大阪弁の女性2人が陽気に飲んでいて、すぐに気さくな会話に巻き込まれたのであった。

店主の米田奈央さんは若いけれどしっかり者。柔らかな人柄が心地いい

 店のカウンターにひとり立つのは、若き店主・米田奈央さん。この方が“とよこさん”かと思ったら、そうではなかった(笑)。店名は、京都市内で鉄板焼き屋を営んでいる祖母の名をいただいたという。

「おばあちゃんの店には子供の頃から毎日のように入り浸っていました」と奈央さん。だからその店で育ったようなもの。いつしか祖母のように、みんなに愛される店を持ちたい。そんな気持ちが降り積もり、鉄板焼きがメインの酒場をオープンさせたのだ。新しいのにどこか懐かしい気持ちになるのは、そのルーツにあったのだ。

店内は鉄板を囲むカウンターのみ。シンプルな内装も潔い

 夢を実現したのは弱冠26歳。店主としてはまだまだ若いけれど「早く店が持ちたかったんです」とにっこり。奈央さんはふんわりした語り口ながら、きびきびと手際がよく、実に頼もしい。これも祖母譲りの才能なのかもしれない。