人手不足、後継者問題、運搬料、肥料代…値上げ要因には事欠かない

 市場さんには成人した長男がいるが、「クリエイティブの仕事がしたいと東京で勉強しています。キャベツ農家を引き継ぐ考えはないようなのでもう諦めていますよ。私はいま50歳ですが10年後の60歳、20年後の70歳まで農家を続けていけるだろうか、と心配もありますが、体力と気力が続く限り美味しいキャベツを作り続けたい。キャベツ以外の作物を作ることは今更できないので一生、キャベツに寄り添って生きていきますよ」。

 人手不足、後継者問題のほか、運搬料、肥料代、トラクターなど工作機械の値上げなどによってキャベツ農家の事業環境は今後、ますます苦しくなることが予想される。キャベツ農家にとってキャベツの理想的な値段をたずねると「1玉300円ほどでしょうか。数年前までスーパーで見られた1玉100円といった大安売りはもちろん小売り業者の判断でしょうが、私たちとしては1玉300円での出荷でやっと経営が安定するように思います」

嬬恋村でのキャベツの収穫は外国人に頼らざるを得ない(写真提供:市場秀信)

 最後に最も美味しいと思うキャベツ料理について聞くと「キャベツの千切りですね。マヨネーズをたっぷりかけて口に運ぶとキャベツが本来持っている美味しさが分かります」。

 ずっしり重いキャベツには農家の苦労が詰まっているのだ。将来の食糧安保のためにも国の腰の据わった対策が望まれる。