強権と介入主義というロシアのDNA
ロシアは、モスクワ公国、ロシア帝国時代から旧ソ連、現在のロシアの歴史を通じて、国益拡張を目指す国家主義的で強いリーダーが統治してきた。イヴァン雷帝、ピョートル大帝やエカチェリーナ2世、旧ソ連のスターリンなどの名前が浮かぶ。
国民の間にも、強い国家主義的なリーダーを求める感情も大きいと感じる。なぜだろうか。
ロシアは、世界の国々で最も多い14の国と国境を接している。西に西欧、南にイスラム、東に中国がある。いずれもロシアにも対抗しうる強国である。安全保障上の懸念は尽きない。
実際に、ナポレオンのフランスやナチスドイツのロシア領内への侵略は国内に大きな爪痕を残した。オスマン帝国は長きにわたりロシアを圧迫してきた。中国とも国境問題を抱えてきた。
日本の北方領土問題も、ロシアから見るとその延長線の問題と言える。日本に返還した場合に、自衛隊や米軍駐留により安全保障上の懸念になることを恐れている。
こうした事情があるため、ロシアには旧ソ連諸国の周辺国を緩衝地帯として確保しておきたいという考えがある。そのため、強権的な介入は、常に選択肢になりうる。
「強権的なプーチン大統領の後は、親西側の民主的な国家になるのではないか」という期待もあるかもしれない。しかし、ロシアの強権と介入主義は、歴史に根差している。歴史が教えるのは、ロシアの強権と介入主義は容易に変わりそうにないということだ。
山中 俊之(やまなか・としゆき)
著述家・起業家
1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。2010年、グローバル理解やグローバル人材開発支援、世界とつながる地域創生支援を目的としたグローバルダイナミクスを設立して代表取締役就任。2015年からは、神戸情報大学院大学教授を兼任、アフリカ等からの留学生に対して社会イノベーションについて教鞭をとる。研究室の卒業生の中からは欧州有力ファンドから資金調達に成功した起業家も生まれる。世界101カ国を訪問(2025年4月現在)。先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。
著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)、『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界の民族超入門』(ダイヤモンド社)など。