50歳の挑戦
開発のきっかけは約15年前に遡る。特許取得でビジネスに成功するテレビ番組を見た惠美子さんの脳裏に、需要が低下する畳事業の活路を見出すアイデアが閃いた。
「畳床はそのままに、畳表としてフローリング柄のビニールシートを張れば、畳の特長を生かしたまま、手軽に低価格で洋室にできるのではないか、と考えたんです。ちょうど私が50歳を迎えた年だったこともあり、“人生も50年過ぎたし、挑戦させて欲しい!”と家族に相談。夫の技術は一流だから、それを生かす方法を考えれば、道は必ず開けるはず。そこで、私が商品のアイデアを出し、夫がそれを形にしていく、という役割分担で開発を進めることにしました」

勝さんと結婚するまでは生命保険会社で働き、ビジネスチャンスを見つける視点と行動力を兼ね備えていた惠美子さんは、“特許取得が新製品開発のカギになる”と考えた。
とはいえ、もともと惠美子さんに特許の知識があったわけではない。家族経営の小さな畳店だから特許取得にお金もかけられない。そこで、特許庁に問い合わせ、紹介された公益財団法人埼玉県産業振興公社・知的財産総合支援センター埼玉と埼玉県よろず支援拠点に相談。「素材ではなく仕組みに関する特許のほうが、適用範囲が広く、開発予算も抑えられて効果的」といったアドバイスを受けながら、数百枚に及ぶ特許資料をたった一人で作成していった。
