特許取得もPRも独力

 開発には、勝さんのもとで畳職人として修業していた息子の勝也さんも加わった。屋内で発生する高齢者の転倒事故に着目し、衝撃緩和に優れた畳床の特性を生かしながら滑りにくく、耐水性もあり、定期的なメンテナンスが不要な畳を目指した。

 一方で、アドバイザーからは、「同業者の誰もが考えるようなことだと特許は取れない」と言われた。惠美子さんはユーザー目線、主婦目線で、「こんな畳だったら使いたい」「こんな畳がほしい」というアイデアを毎日のように考え、勝さんと勝也さんに試作品をつくってもらった。

発泡スチロールなどクッション性の高い畳床の上に、い草ござではなく、板に貼着したビニールシートをかぶせるのが「リフォーム畳®」の構造(撮影:持城 壮)

「あえて、畳職人である2人が“無理!”という内容にチャレンジしました。い草を使う通常の畳とは違うので、今までにない問題が数多く発生しましたが、畳職人の固定概念では解決策を見つけるのは難しい。私たちは普通の職人だったら思いつかない方法や視点で考えることで、改良を重ねていきました」

 さらに、専門家から「いくらいい商品が完成しても、世の中に知られなければ売れない。そのために、ホームページは絶対に必要!」と言われた惠美子さんは、東京・表参道にあるWebサイト制作教室に1カ月間通い、Web制作を一から習得。製品の特性や施工事例などを紹介するホームページを自身の手でつくり上げた。

 こうして、家族一丸で取り組み、開発した『リフォーム畳®』は2015年に製品化。惠美子さんは、展示会への出展なども積極的に行い、個人宅だけでなく、介護施設からの問い合わせも増えていった。

「リフォーム畳®」の見た目はカスタマイズできる。これはフローリング調の「リフォーム畳®」。車いすでの移動もスムーズだ。へりの段差もなく、車輪をひねって方向転換してもよじれず、表面に傷や跡もつきにくい(撮影:持城 壮)