大山畳店 副代表 大山惠美子さん(左)と、長女の沙織さん(右)。手元にあるのは、特許を取得した、車いすも利用できる『リフォーム畳®』(撮影:持城 壮)

 日本企業全体の99.7%を占める中小企業において、時代を変えようと奮闘する女性経営者を紹介するシリーズ。最終回は、ライフスタイルの洋風化により需要が減少する畳業界において、全く新しい発想の畳開発に取り組んで特許を取得した、大山畳店の大山 惠美子氏。創業者の妻として母として家族経営を支え、伝統産業の新たな可能性を切り拓いている女性だ。

(加藤 旬介:ライター・編集者)

和室が洋室になり高齢者に選ばれる畳とは?

 大山畳店は、埼玉県八潮市にある、実家が農家だった大山勝さんが近隣の畳職人のもとで修業をした後、1980年に創業した畳の製造販売店だ。

 創業当初、好景気や周辺の再開発のお陰で順調に成長していた同店に、陰りが見え始めたのは2000年を過ぎた頃。生活様式が洋風化し、フローリングの床が人気となって畳市場が縮小。和室から洋室にリフォームする人が増え、畳の張替えよりも、不要になった畳の処分依頼が増えていった。

 倒産や廃業する畳店も増えるなか「畳のままで洋室にリフォームする」という今までにない発想で、新たな畳の開発を推し進めたのが、勝さんの妻である大山 惠美子さんだ。約5年の開発期間を経て完成し、特許も取得した『リフォーム畳®』は、独特のクッション性を持つ畳の長所を残しながら、フローリングのように車いす移動が可能。介護保険の住宅改修制度も適用されるため、高齢者がいる家を中心に需要が拡大し、日本の超高齢社会を支える新たな床材として、八潮市推奨品、平成30年度八潮ブランドなどに認定され、渋沢栄一ビジネス大賞2020・特別賞も受賞した。

埼玉県知事から「渋沢栄一ビジネス大賞・特別賞」の賞状を受け取る惠美子さん(写真提供:大山畳店)