空飛ぶクルマに参画する「4陣営」の機体特徴と性能

 大阪万博の“空飛ぶクルマ”デモにエントリーしたのはスカイドライブ、丸紅、ANAホールディングス、日本航空(JAL)の4社だが、日本航空は開幕前に離脱。実際に飛ぶのは残り3社だ。

 トヨタ自動車出身の福澤智浩氏が創業したスカイドライブが飛ばすのは、前述の自社開発、スズキ製造の12ローターマルチコプター型eVTOL(電動垂直離着機)である。乗員はパイロット1名+乗客2名の計3名。最高速度は100km/hで航続距離は15km。

スカイドライブが大阪・関西万博に出展している空飛ぶクルマのデモ飛行(写真:共同通信社)

 丸紅が飛ばすのは、イギリスのバーティカル・エアロスペース社が開発した8ティルトローター型eVTOL。自衛隊が導入しているオスプレイに似ているが、オスプレイのようにエンジンユニット全体をチルトする(傾ける)のではなく、ローターとそれを回す電気モーターの部分だけの仰角を可変とすることで垂直離着を可能とした。乗員はパイロット1名+乗客4名の計5名。最高速度322km/h、航続距離160km。

 ただしこの機体は開幕には間に合わなかった。春はアメリカのリフト・エアクラフト社の1人乗りマルチコプター「HEXA」でデモフライトを行い、会期末の10月にティルトローター機の飛行を目指すという。

 ANAホールディングスの機体はトヨタも出資するアメリカのジョビー・アビエーション製の5人乗りeVTOL。主翼に4基、尾翼に2基の計6基のティルトローターがついている。離着陸時はすべてを上向きにして揚力を得、高度を上げた後は前進側に振って速度を出し、一般的な飛行機と同様主翼で揚力を得て飛行する。最高速度322km/h、航続距離160km。

トヨタ自動車と米新興企業のジョビー・アビエーションが公開した「空飛ぶタクシー」の機体(2024年11月、写真:共同通信社)

 今回デモフライトを断念した日本航空の機体はアメリカのアーチャー・アビエーション製eVTOL。6つのティルトローターと6つの固定ローターの計12ローターを持ち、最高速度241km/h、航続距離160km/h。乗員はパイロット1名、乗客4名の計5名。

 断念の理由について万博でのデモより耐空証明、型式証明の早期取得を目指すためとしている。

アーチャー・アビエーションが開発した空飛ぶクルマ(写真:ロイター/アフロ)

 デモフライトは3陣営が会期中フルに行うわけではなく、スカイドライブは7~8月、丸紅は4~6月と10月、ANAホールディングスが9~10月と、入れ替わりで行うという。“空飛ぶクルマ”が実際に飛ぶところを見たいという人は、目当ての機体が飛ぶ時期をチェックしておきたい。

 また開幕日のデモフライト中止から天候不順への耐性は高くないと思われるので、梅雨時や秋雨時を中心に空振りリスクもある程度念頭に置いておく必要があろう。