それから10年が経ち、特にウクライナ戦争が長期化していることで、ロシアにとって北朝鮮は、武器と兵士をふんだんに提供してくれる「最大の盟友」に昇格した。加えて、停戦後の占領地域のインフラ整備でも、安価で勤勉な北朝鮮兵士の助力を仰ぎたい。

 そのために北朝鮮の独裁者をもてなす「格好の舞台」が、5月9日にやって来るのである。前出の北朝鮮ウォッチャーが続ける。

金正恩は鉄路でのモスクワ入りを希望

「プーチン大統領は金正恩委員長を招待したいし、金委員長もモスクワを訪問したい。祖父・金日成(キム・イルソン)主席と父・金正日(キム・ジョンイル)委員長はモスクワを訪問しているが、自分だけはいまだ果たしていないからだ。

 だが、そこへ2つのハードルが立ちはだかった。第一に、同じく重要な招待客である習近平主席の承諾を取ることだ。

 ロシアにとって中国は、最大の盟友であり貿易相手国だ。西側諸国から強烈な経済制裁を受けても、3年も戦争を続けて来られたのは、ひとえに中ロ関係が盤石で、圧倒的な経済的協力関係を維持できているからだ。

 ところが、このところの中朝関係は、中ロ関係もしくはロ朝関係ほど思わしくない。そのため、金委員長を招待することによって、習主席が機嫌を損ねてしまっては元も子もない。

 もう1つのハードルは、金委員長の訪問の仕方だ。金委員長は、2001年の父親の時と同様、鉄路でのモスクワ入りを希望している。

2001年8月にモスクワを訪問した北朝鮮の金正日総書記。モスクワへは鉄道を使って向かった(写真:TASS/アフロ)

 ところが現在は、ウクライナ戦争の真っ最中で、ロシア側は『完璧な警備』を保障できない。米ドナルド・トランプ大統領がひとたび暗殺命令を出せば、アメリカの最新兵器が『お召列車』に襲いかかるだろう。

 そこでプーチン大統領は、セルゲイ・ショイグ国家安全保障会議書記(前国防相)に、これらの問題解決を託した」