ケネディ暗殺に関する機密情報公開で暴露されたCIAの実態と個人情報漏洩
オズワルドの単独犯行説を覆す材料は今のところ見つからず
2025.3.24(月)
高濱 賛
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CIA系の銃販売店でオズワルドは銃を購入
今回公開された文書には、このアンダーヒル氏のCIA陰謀説を裏付けるものはないが、オズワルド氏とCIAとの「関係」にはこんな文書がある。
「オズワルドが暗殺に使用した銃は『武器取引のキング』と呼ばれたサミュエル・カミングズ氏が経営する『International Arm Company(Interarm)』傘下の『Klein’s Sporting Goods』で購入した。カミングズ氏はCIAの情報提供者だった」
(JFK Files: Section on Would-Be Whistleblower Who Was Found Dead Goes Viral - But There's a Catch (westernjournal.com))
ケネディ暗殺とは直接関係がないのだが、今回の公開された内容にはスパイ活動法(Espionage Act of 1917)や個人情報保護法(Privacy Rights Act)に抵触する可能性があることが判明している。
関係機関や個人が法的措置をとるのではないか、といった憶測がすでに出ている。
その一つがCIAの内部情報の「暴露」である。
ケネディ大統領(当時)のアーサー・シュレシンジャー特別補佐官が1961年に書いた「CIA Reorganization To the President」という15ページにわたるメモだ。
一、CIAには他の政府機関をないがしろにした自主決定、自主管理があり、懸念される面がある。国家の中に多くの特質を有する国家があるようなものだ。
二、在外公館に常駐する外交官のうち約1500人はCIA諜報部員で、大使の管理下にはない。政治担当部門に配属されているCIA諜報部員は赴任先の国(開発途上国)の政府に助言することが任務になっている。
三、駐フランス大使館の場合、外交官を隠れ蓑にしたCIA諜報部員は128人おり、仏政界の大物政治家との接触を正規の米外交官にはさせないようにしている。
1961年と言えば冷戦の真っただ中、政治指導者たちは国家安全保障優先国家の確立に全力を挙げていた。
「CIAが外交の前線に出て判例などには振り回されない不条理が常識になっていた時期だった」(イエール大学のグレッグ・ガランデン教授)
だが、こうした具体的なCIAの内情が公になることはなかった。64年前とはいえ、CIAの実態が明かされたメモが解禁されるのは稀有なこと。
CIA関係者は神経を尖らせている。
もう一つは、個人情報の「漏洩」だ。
ケネディ暗殺事件は上院特別委員会(フランク・チャーチ委員長)*3でも究明が行われ、150人の調査員・スタッフが調査に当たった。
また聴聞会、会議など126回開かれた。約800人が証人として召喚された。この中には国務省高官、大使、著名な弁護士も含まれていた。
*3=チャーチ委員会 (Church Committee=「諜報活動に関する政府活動を調査する米国上院特別委員会」。1975年に設置され、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)、連邦捜査局(FBI)、内国歳入庁(IRS)による不正行為を調査した。
今回公開された機密文書には、同委員会の調査に関与した関係者の社会保障番号(Social Security Number=SSN)が明記されていたのである。
SSNは1930年にIRSが設立されて以来、全米国民の個人情報が蓄積された「重要資産」だ。これで個々人の居住地、職業、財産などすべてが分かってしまう。
ワシントン・ポストは文書に明記されている人物にコンタクトし、本人確認をしているが、生存者も数多くいるという。
プライバシーは米国民とっては侵すことのできない最優先の権利。トランプ政権に対する法的措置をとる動きが出てきそうだ。