エピローグ/国家最大の敵は?
ロシアにプーチン新大統領が2000年5月に誕生した時、彼のスローガンは強いロシアの実現と法の独裁でした。
しかし結果として、弱いロシアの実現と大統領個人独裁の道を歩んでいます。
2024年5月に誕生したロシア新内閣は戦時内閣です。
ウクライナ戦争の終わりが見えず、露国家予算案の戦費不足が表面化。
プーチン大統領が経済専門家を国防相に任命したことはウクライナ戦費捻出の必要性を物語っており、プーチン大統領はロシア(自分)に有利な停戦条件交渉であれば対露融和的なトランプ大統領案に乗り、ロシア(自分)に痛みを伴う停戦案であれば乗らないでしょう。
油価が下落傾向に入り、欧州の盟主ドイツに対露強硬派首相が誕生することに対し、プーチン大統領はウクライナ戦争の行方を案じていることでしょう。
3月18日に実施された2時間以上にわたる米露首脳電話会談の結果、ロシア・ウクライナ双方が相手のエネルギー施設への攻撃を行わないことは確認されましたが、トランプ大統領が求めていた30日間即時停戦は合意に至りませんでした(実質、露側に拒否されました)。
この結果、エネルギー施設への攻撃停止では合意しましたが、現状双方はミサイルやドローン攻撃を続行しています。
換言すれば、プーチン大統領は戦況有利と見て、停戦を遅らせる戦術に出たことになります。
米トランプ大統領は3月18日の米露首脳会談を「生産的」と発表しましたが、これは自分自身の体面を保つための表現であり、実態は苦虫を噛み潰す思いではなかったかと推測します。
今後の注目点は、米国が直ちに対宇全面的軍事支援を再開するかどうかになりましょう。
もし全面的軍事支援を再開すれば対露圧力となり、抑制的軍事支援継続ともなれば、プーチンの鼻息を仰ぐトランプとなります。
物別れに終わった2月28日のゼレンスキー大統領とトランプ大統領会談結果、欧州諸国はロシアの軍事侵攻に対し戦後最大の危機感を抱くに至りました。
プーチン大統領は欧州分断を画策していましたが、結果として欧州主要国の対露団結は強化されました。
一方、欧州には懸念材料もあります。近年台頭顕著な極右勢力の共通項は親露・反ウクライナです。
ウクライナ戦争に関し露デマゴーグは「欧米はNATO(北大西洋条約機構)を東進させた。欧米が悪い、ウクライナが悪い」との主張を今でも展開していますが、デマゴーグには古今東西、共通の敵がいます。
では、共通の敵とは何でしょうか?
それは「真実」です。
プロパガンダの天才、ヒトラー側近のゲッペルス曰く:「Die Wahrheit ist der größte Feind des Staates.」(「真実は国家最大の敵である」)
偉大なるドイツ最大のデマゴーグ、ゲッペルスは国家最大の敵を正しく理解していました。
偉大なるロシア最大のデマゴーグ、プーチン大統領も国家最大の敵を正しく理解しているのでしょう。そう考えると、彼の言動のすべてがストンと腑に落ちることになります。
油価(露ウラル原油)が下落傾向に入り戦費が枯渇しつつある現在、ウクライナ戦争停戦を一番望んでいる・必要としているのは、実は露プーチン大統領その人のはずとの結論に至ります。
上記理由にて、筆者は今年中にウクライナ戦争停戦・終戦の姿が透けて見えてくるものと予測しております。