第1部 2油種(北海ブレント・露ウラル)週次油価動静
最初に、2021年1月から25年3月までの代表的2油種週次油価推移を概観します。
北海ブレント(軽質・スウィート原油)はスポット価格、ロシアの代表的油種ウラル原油(中質・サワー原油)は露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB(Free on Board)油価にて、この2種は性状(品質)が異なります。
原油需給は均衡しており、地政学的要因以外に油価上昇材料は現状存在せず、油価は下落傾向です。
米国は2022年5月度よりロシア産石油(原油と石油製品)を輸入停止。
一方、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3油種(S-1ソーコル原油/S-2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入しておりません。
油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後、下落開始。
バルト海から出荷されるウラル原油の主要輸出先は欧州(オランダ)でしたが、ウクライナ侵攻後に欧州向けは激減。
輸出先を失ったウラル原油は暴落し、北海ブレントとの値差はロシア軍のウクライナ侵攻後一時期最大バレル$40の値差となりましたが、最近は値差約$15の水準で推移しています。
しかし、原油品質差による正常値差は$2~3程度ゆえ、依然としてロシア産原油の安売り状態が続いていることになります。これこそ対露経済制裁効果にて、ロシアの国益を毀損しています。
ちなみに、3月10~14日のウラル原油週次平均油価は$56.17/bbl(前週比▲$0.10、1bbl=約158.9リットル)と低迷。
今年の露国家予算案想定油価は$69.7ですから、予算案想定油価を大きく下回っていることになります。
この超安値ウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドです。しかし、これはビジネスそのものであり政治的動機はありません。
一方、中国が輸入している原油はウラル原油ではなく、ESPO原油です。長期契約に基づきESPOパイプラインで供給されていますが、一部のESPO原油は極東コズミノ出荷基地から海上輸送されています。
