
高校野球や社会人野球で活躍した選手の中には、ビジネスの世界でも成功している人が少なからずいる。彼らはなぜ野球だけでなく実社会でも活躍できているのだろうか。そんな“元野球人”の仕事論や哲学とは。1回目はNTT東日本の監督としてチームを日本一に導いた飯塚智広さんに話を聞いた。(佐伯 要:ライター)

大学では投手として“戦力外”に
2017年の都市対抗野球大会で、NTT東日本の監督としてチームを日本一に導いた飯塚智広さん。現在は社業に就きながら、NHKの高校野球中継の解説者を務めている。選手に寄り添う視点と爽やかな語りは、多くの高校野球ファンを魅了する。
現役時代は左投げ左打ちの外野手として活躍。大学(亜大)、社会人(NTT東日本)では日本代表に選ばれ、日米大学野球選手権やシドニー五輪に出場した。飯塚さんが現役時代の経験から得たものは何か?
野球エリートだと思われるかもしれませんが、私は高校時代に甲子園に行けませんでした。だから、自分では「雑草」だと思っているんです。
二松学舎沼南高校では投手兼外野手としてプレーしていました。1年秋は関東大会の準々決勝で敗退。2年夏は千葉大会の決勝で敗退と、どちらも「あと1つ」で甲子園を逃してしまったんです。
3年夏は千葉大会ベスト16。本気で甲子園を目指していたので、「こんなに悔しい思いをするなら、もう野球はやりたくない」と思いましたね。
でも、それは一瞬だけ。すぐに気持ちを切り替えて、亜細亜大学へ進みました。
投手として入部しましたが、2月に入寮してすぐに外野手への転向を勧められました。
それでも「投手をやりたい」と言い続けたのですが、3月中旬のある日、ブルペンで4年生のエースだった入来祐作さん(現・横浜DeNA二軍投手コーチ)の隣で投球練習をする機会を与えられたんですね。
入来さんのピッチングを間近で見て、「自分は投手としてやっていくのは無理だな」とあきらめました。
1年生でベンチ入りメンバーではなかった私が入来さんの隣で練習するなんて、異例のこと。おそらく、私に投手をあきらめさせるためだったのでしょう。