そしてこれらを実現していくステージですが、これも3つのレベル感で考えられます。地方創生に取り組んできた石破総理のこれまでのアプローチでは、小レベルが中心という印象でした。「コミュニティビジネス」「地域密着の企業」「女性活躍」などというキーワードでくくられるようなものです。それはそれで重要なのですが、上記のような地域単位での経済的独立などを考えると、それだけだとちょっと小さすぎます。
一方、経産省などが中心となって行ってきた地方創生は、レベルが大きいものでした。熊本に台湾の半導体企業TSMCの工場を誘致する、北海道・千歳にやはり半導体メーカーであるラピダスの製造拠点を誘致するといったもので、投資額は数兆円というレベルです。経産省とは関係ありませんが、トヨタ自動車が進めるウーブンシティなどもかなり大規模だと言われています。これらは巨大企業や政府支出がなければなしえないレベルのものになります。
企業城下町の好例は日本各地に
私はこういった小レベルでも大レベルでもない、中レベルでの地方創生こそ、地域経済のためにも持続性という意味でも、これから特に求められると考えています。必ずしも人口で区分けするのは適当ではありませんが、ざっくり言えば5~30万人程度の地域ごとに、その地域に根差した企業(群)を中心にした経済的生態系(エコロジー/クラスター)を形成するべきという考えです。
県だとちょっと大括りすぎる感じがあり、各地域は、歴史的背景や地理的要因などから塊になっている5~30万人くらいの地域圏で当該地域に根差した企業(群)を中心に考えるべきかと思います(首都圏などの大都市圏や政令市などを除く)。いわば、現代版の新しい企業城下町のイメージです。一般論として、“外貨”を稼げている企業は、それなりに資金を有しているので、政府の大規模な財政支出はさほど求められてはいません。
たとえば、丁度先週お邪魔したところでもあり(南魚沼市)、これまで2つの市(三条市、妙高市)でアドバイザーを務めさせていただいて来た経験も踏まえて新潟県を眺めてみれば、柏崎市にはブルボンがあり、三条市にはアウトドア用品のスノーピークや暖房器具のコロナがあります。長岡市はヨネックスの発祥地で工場があります。新潟市には亀田製菓などもあり、上述の南魚沼には「八海山」(日本酒)で知られる八海醸造や雪国まいたけがありました。八海醸造が創設・運営する「魚沼の里」は、多くの観光客等が訪れる一大観光エリアにもなっています。これらの企業は地域を支える力になっています。
日本全国を見渡してみても、日立市の日立製作所、豊田市のトヨタ自動車、浜松のスズキやヤマハ、延岡市の旭化成、鳴門市の大塚製薬、黒部市のYKK、小松市のコマツなど、企業は、本社や製造拠点をおく地域とともに発展してきた事例がいくつもあります。地域の発展とそこに根差した企業の成長は切っても切れない関係にあるところが少なくありません。

