「交通インフラを整備して地方に工場を…」という時代ではない
まずポイントは3つあります。
1つ目は、地域単位での「食い扶持」「稼ぐ力」を重視することです。田中角栄総理(当時)の日本列島改造論は、工業の再配置や交通・情報通信の全国ネットワーク化をテコにして、ヒト・モノ・カネの流れを巨大都市から地方に逆流させることに主眼が置かれました。高速道路網や新幹線の整備はその手段でした。
しかし今の時代になると、交通インフラをバンバン整備して地方に工場を作るという話は現実的ではありません。日本経済はほとんど成長しない状態が続いています。経済も人口も伸びに伸びていた当時の首都圏や、すでに高齢化が一段落して人口減少局面に入っている地方と違って、首都圏の高齢化はこれからが山場で深刻化することもあり、企業も工場等をガンガン地域に再配置する時代ではない(国にも首都圏にもかつてほどの余裕はない)のは明らかです。
では、令和の列島改造はどうするのか。地域の経済的活性ということでは同じですが、国や首都圏等からの資金や企業等の再配分に頼るだけではなく、各地に埋まっているその地域の“資源”に注目し、それを磨くことで、地域の稼ぐ力を向上させていくことがより重要なのです。
2つ目は、自治体中心ではなく、地域のリーダー(始動者)、特に経済人を中心とした地域活性を実現するということです。従来の政府主導の地方創生では、「国から地方自治体におカネをバラまいて…」という自治体中心の地方創生になっていました。しかし、それだけではうまく行きません。これを自治体とその地域の産業を中心にしてとらえ直すということ、つまり官民連携を基本にした地方創生にしていく必要があるということです。特に経済人の活躍が期待されます。
3つ目は、これまでともすれば「遅れている」と見られがちだった農林水産業や、まだ発展させきれていないエネルギー産業など、各地で高いポテンシャルを持つ分野を伸ばすということです。