もう一つのトップリーグ
もう一つの変化は「外国人投手」の活躍が目立ち始めたことだ。
これまでにも、南海で通算100勝したジョー・スタンカや、同じく阪神で100勝したジーン・バッキーなどの外国人投手がいたものの、圧倒的に「打者」が多かった。
しかし1990年代から、投手の活躍が目立つようになった。外国人投手のシーズン最多勝は、1964年のバッキー(阪神)だけだったが、この時期以降、95、96年グロス(日本ハム)、ガルベス(巨人)、2000年バンチ(中日)、02年ホッジス(ヤクルト)、パウエル(近鉄)、07、08年グライシンガー(ヤクルト、巨人)、11年ホールトン(ソフトバンク)、14年メッセンジャー(阪神)と続出した。NPBの投手がMLBで活躍したことで「投手にも互換性がある」ことが明らかになったと言うことだろう。

こうした変化は、MLBサイドから見たNPBの評価が、相対的に高まったことを意味している。かつては「都落ち」のイメージだったが、90年代以降、MLBで不遇だった若手選手は、この時期からNPBを「もう一つのトップリーグ」として意識し始めたのだと言える。
しかし、新型コロナ禍の2020年以降、NPBで活躍する外国人選手はめっきり減った。
主要な打撃タイトルを獲得したのは2024年首位打者のDeNAオースティンだけ。投手では、ソフトバンクのリバン・モイネロが2020年に最優秀中継ぎ、24年に最優秀防御率、中日のライデル・マルティネスが22、24年に最多セーブ、ヤリエル・ロドリゲスが22年に最優秀中継ぎになっているが、これらの投手はすべてキューバ出身でメジャーリーガーではない。MLB出身では、22、23年と阪神のロベルト・スアレスが最優秀中継ぎになっただけだ。
2010年以降、ダルビッシュ有、田中将大、大谷翔平、山本由伸と、NPBのエース級の投手がMLBでもトップクラスの成績を上げるようになった。この時期から「トラックマン」などの機器がNPBでも導入され、投手は自らの投球を「デザイン」するようになって急速に進化した。
近年のNPBの極端な「投高打低」の原因には諸説あるが、NPBの投手のレベルアップ、とりわけ「球速アップ」が大きいのは間違いないだろう。MLBから来た打者たちも、こうしたレベルの高い日本人投手に対応できなくなったのだ。