ディープシークにトランプ大統領はどう反応したのか?
実際にディープシークがどこまで革新的な技術を開発したのかに関しては、専門家の間でも意見が分かれているが(実際に27日に価格が下落したテクノロジー関連株は、翌日ある程度まで値を戻している)、一定のイノベーションを実現したことは間違いないと見られている。この事態に、米政府はどう反応しているのだろうか。
1月に新政権を発足させたばかりのトランプ大統領は、意外に思われるかもしれないが、早々と「敗北宣言」とも取れる発言をしている。
報道によれば、トランプ大統領は1月27日の夕方に開催された下院共和党議員の集会で、ディープシークが低コストで優れたAIモデルを開発したことは「前向きな発展」であり、「より高速で、より安価にAIを開発できる未来」をもたらすものと称賛。その上で、今回の発表が米国の産業界にとって「勝つための競争に全力を注ぐ必要があるという警鐘となるはずだ」と述べた。
トランプ大統領は就任直後から、米国内でのAI開発を積極的に推進する姿勢を取っている。
たとえば1月21日、バイデン前政権が2023年に発布していた、AIがもたらすリスクへの対応を義務付ける大統領令を撤廃。翌日の1月22日には、ソフトバンクグループとオラクル、そしてOpenAIの3社が、米国内でのAI関連インフラ整備を進める事業「スターゲート」を開始することを明らかにしている。
この事業には今後4年間で5000億ドル、日本円にして77兆円を超える投資が行われるそうだ。
それだけに、「本当にこれだけの巨額が投じられるのか」と計画を疑問視する声もあり、彼の盟友であるはずのイーロン・マスクも、「彼ら(計画に参加している3社)には金がない」とXに投稿している(ただこの発言の方こそ事実ではないとの指摘も出ている。
トランプ大統領にしてみれば、ディープシークの成功を知って、「ほら見たことか」という思いだったのかもしれない。ぐだぐだ言っているうちに中国企業に追い抜かされるぞ、というわけだ。
あるいは、AI開発には膨大な予算が必要だと主張する大手テック企業に対し、「中国企業にできるのだから、もっと効率的にやれるだろう?」というメッセージを出したかったのかもしれない。いずれにせよ、ディープシークの優位性を疑問視するより、それを受け入れて米国の産業界を鼓舞する発言を行っているのである。