「聖書女子」インフルエンサーの“危険な”祈り
聖書女子の祈りの内容は、まず国民を導く責任をトランプ氏に与えたことを主に感謝することに始まった。そして、「神がトランプ氏に反対する者からの盾を作り」「米国がどの敵よりも強力であることを祈り」「主の名のもとに、トランプ大統領にはいかなる兵器も通用せず、彼に盾突く全ての舌(発言)も非難されるだろう。神があなた(トランプ氏)の味方なら、誰があなたに敵対できるだろうか」(カッコは編集部注)というものであった。

聖書女子のインスタグラムでも散見されるが、キリスト教的な教えを広めているという割には「敵」という攻撃的な言葉がたびたび使われ、少々首をひねりたくなる。彼女らの理論からすれば、神を味方につけたトランプ氏に盾突く「敵」は、神による裁きを受ける、といったところだろう。
この聖書女子の「祈り」が、一部の報道ではキリスト教原理主義、そして「キリスト教ナショナリズム的」であると指摘されている。そしてこの「キリスト教ナショナリズム」という考え方は、昨今米国で危険視されている。
米CNNによると、キリスト教ナショナリズムは一部の研究者により 「詐欺師のキリスト教」と位置付けられているという。キリスト教ナショナリズムを信じる人たちは、米国を白人のキリスト教徒の国として創設しようと目論んでおり、黒人など白人以外の移民に対する敵意や性差別を隠すため、宗教的な言葉を使っているとされる。
トランプ氏が就任早々、多様性を重んじる政策を撤廃し、移民や性的マイノリティの排除を宣言した背景には、キリスト教ナショナリズム的価値観が影響していると言えるだろう。その一つが、過去に統一教会との関係も指摘された保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」が昨年、次期共和党大統領に望む政策を提唱した「プロジェクト2025」の内容だ。多様性の否定に加え、人工妊娠中絶を政府によって管理するなど、キリスト教ナショナリズムに近いものであったという。
ちなみにトランプ氏は昨年、自らの「キリスト教的価値観」を正当化するかのように、独自の聖書を販売している。テレビショッピングの司会よろしく嬉々として宣伝したこの聖書には、合衆国憲法や独立宣言なども含まれているが、この2つは、わざわざ金を出して買わずとも無料で入手が可能なものだ。販売価格は通常の聖書より割高の60ドルほどだが、AP通信がこの聖書は中国製で、原価が一部3ドルほどだと暴いている。
こうしたキリスト教ナショナリズムをめぐる議論で思い出すのは、大統領選でトランプ氏から目の敵にされた歌手のテイラー・スウィフト氏だ。