今後の経済・物価について日銀はどう整理しているのか?
今後に関しては、簡易説明資料の上部に明記された「経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移、先行き、見通しが実現していく確度は高まってきている」との文章が、当面の日銀の挙動を拘束することになる。
ちなみに、今回の利上げを経て、日銀とスイス国立銀行(SNB)の政策金利は並んだわけだが、両通貨の対ドルでの動きには雲泥の差がある。
繰り返し論じてきたように、今回の円安局面を金利面だけから正当化するのは無理があるし、スイスフランの動きと比較すれば、その点は自明であるように思える(図表①)。
【図表①】
象徴的に言えば、スイスは貿易黒字を積み上げ、日本は貿易赤字に転落しているという事実は確実に影響していると考えられる。
今回の利上げに対し消費者物価指数(CPI)の基調の弱さを指摘しつつ、利上げに反意を示す向きもある。
確かに、日銀は発表する「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」を見ると、インフレ率は+1.0~+1.5%のレンジにある(図表②)。自然利子率が▲1.0~+0.5%だとして、仮にインフレ率を+1.5%と仮定すれば中立金利は+0.5~+2.0%ということになる。
【図表②】
この見地に立てば、既に政策金利は中立水準に達したということになるし、インフレ率を+1.0%と置けば引き締め状態に入ったということになる。その点を踏まえて性急さを指摘するのは分からなくはない。
ただ、家計部門が体感するインフレは基調的なインフレ率ではなく総合的なインフレ率である。この点が無視できなくなっていることは否めない。