円安抑止の利上げは政治的にも「あり」では?
例えば、2024年12月のCPI(消費者物価指数)は総合ベースで前年比+3.6%と、生鮮食品を中心として大幅な伸びが見られた(図表③)。
【図表③】
ただ、2024年に歴史的な上げ幅として好感されたベアの平均上げ幅は、CPIの伸びとほぼ同じ3.56%である。もちろん、12月CPIは瞬間風速ゆえ両者が相殺されたとまでは言えないが、実体経済で起きていることは値上げと賃上げの循環である(あえて「好」循環と呼ぶことは控える)。
植田総裁は「だからといってポンポン上げるかというと安易に考えずに、注意深く進めていきたい」と早期利上げ期待をけん制するが、円安インフレが続く限り、利上げはいつ何時でも決定される可能性がある。
円安抑止を目的とする利上げに関し、相応の民意は得られる雰囲気がある。この点は政治も理解するところではないか。実際、日経新聞が1月26日に公表した調査では、利上げへの評価について「評価する」との回答が5%で「評価しない」の34%を大きく上回っている。
なお、需給ギャップが埋まらないことを利上げ反対の理由として挙げる向きもあるが、やや浅薄に思える。というのも、そもそも人手不足で資本稼働率が低位安定を強いられているという現状があるからだ。
「労働供給制約ゆえに、資本設備を使いたくても使えない」という現状があるとすれば、実態以上に経済が遊休資産を抱えている(需給ギャップが緩んでいる)ように見えてしまう恐れがある。
この辺りは諸説あり得るが、そこかしこで労働面での供給制約が指摘される中、「需給ギャップに余裕があるから利上げは尚早」という主張は鵜呑みにできない。物価、賃金、円金利、全てが上がる中、通貨の値段である金利も上がるというごく自然な相場現象が起きているのではないか。