同時並行で進めている山にお金が入る仕組み作り
中心にあるのはLocal Commonsで、そのLocal Commonsに個人や企業、資金を呼び込み、住民などサービスの受益者に対して行政サービスやインフラの維持管理を提供する流れが見て取れる。森林や空き家のようなLocal Assetsの存在を可視化し、その部分もマネジメントも手がける。
こうした全体のマネジメントを手がけるのが住民を主体としたLocal Coop構想である。その中で、組織としてのLocal Coopが自治体と手を組み、自分たちのコミュニティの課題を解決したり、必要なサービスを生み出したりという役割を担う。
いずれにせよ、最終的な到達地点はLocal Coopによるローカルコモンズの再生と管理。右から行くか、左から行くかというプロセスの違いに過ぎない。
それを踏まえたうえで、LC尾鷲が目指している世界を改めて語ると、山と海の再生である。より具体的に言えば、山に手を入れることで、山と海の生物多様性を取り戻そうとしているのだ。
尾鷲の海は黒潮の蛇行や海水温の上昇によってダメージを受けている。こういった気候変動が原因と思われる環境変化に打つ手は限られているが、森を整えることで尾鷲の海を豊かにすることはできる。
山に降った雨が森の中にとどまれば、葉や腐葉土の中に水が蓄えられる過程で栄養分が溶け込み、時間をかけて海に流れ込む。それは、植物性プランクトンや海藻の栄養となり、動物性プランクトンや魚類の栄養につながっていく。食物連鎖である。
それがゆえに、LC尾鷲は生物多様性の世界で名が知られている坂田を招き、森づくりを進めているわけだ。ここでは踏み込まないが、LC尾鷲は藻場を荒らすガンガゼの駆除や藻場の再生にも取り組んでいる。

そして、生物多様性の森づくりと同時並行で進めているのが山にお金が入る仕組み作りである。