「ポスト資本主義社会の具現化」が意味するところ

 これまで里山や里海といったローカルコモンズは地域の共通資本として適切に管理されてきた。里山や里海の生物多様性が高いのは、自然の恵みを持続可能とするため、人間が管理してきたからに他ならない。

 ところが、高齢化や人口減少、一次産業の衰退やコミュニティの弱体化によって、ローカルコモンズも失われつつある。

 そうしたコモンズの再生を通して、新しい資本主義社会のあり方を考えると同時に、コモンズの価値を再定義し、資本主義の中で適切に評価する。そのうえで、新しいコモンズをベースに、一人ひとりが自ら考え、行動して生きていく──。

 私なりの捉え方だが、これが「ポスト資本主義社会の具現化」の意味するところだと考えている。

 Local Coop 大和高原であれば、資源ゴミの回収やコミュニティバスの運営をフックに、自分たちに必要なプロジェクトを自分たちで立ち上げていけるような仕組みを作ろうとしている。こちらが目指しているのは、行政を補完するサブシステムの構築である。

Local Coop 大和高原が始めた資源ゴミの回収Local Coop 大和高原が始めた資源ゴミの回収

 それに対して、Local Coop 尾鷲(LC尾鷲)は、ローカルコモンズの再評価にまずは主眼を置いている。

 尾鷲の場合、高齢化や人口減少に加えて、木材価格の低迷による林業の衰退、海洋環境の変化に伴う漁獲量の減少など、複合的な課題に直面している。その中で、尾鷲ヒノキの基盤となった森をローカルコモンズと位置付け、持続可能な森づくりを通して山と海の再生、そして環境教育の実践につなげようとしているのだ。

尾鷲の海に流れ込む「みんなの森」の沢尾鷲の海に流れ込む「みんなの森」の水の流れ

 そういう意味で言うと、LC大和高原はコミュニティの再生と住民自治の実現、LC尾鷲はローカルコモンズのサステナビリティから始めており、プロジェクト単体として見れば全くの別モノだ。ただ、最終的に目指している到達点は変わらない。

 次ページの図は、林たちが書いたLocal Coopのコンセプト図だ。