ハイブリッド機構を持たないWR-Vの気になる燃費、快適性は?
パワートレインは1.5リットル自然吸気+無段変速機CVT。エンジンは最高出力118馬力、車重1230kgに対するパワーウェイトレシオは10.4kgとそれほど余裕があるわけではない。だが、回転上がりがスムーズなのと高回転においても微振動、ノイズが小さいことが幸いして、登り急勾配などパワーが必要な時には遠慮なくアクセルペダルを踏んでエンジンを回してやればいいと割り切れる仕立てではあり、パワー不足は気にならなかった。
CVTは有段変速機のようなステップ制御が仕込まれているが、アクセルペダルを大きく踏み込む時に出る程度で、おまけの類である。
燃費はマイルドハイブリッド、アイドリングストップなどの機構を持たないため、郊外路、高速道路と都市部で結構大きな差が出る。郊外路、高速道路オンリーであれば17~18km/リットルくらいでドライブできた半面、首都圏の市街地オンリーの区間では12km/リットル台。今回は比較的スムーズな交通状況ばかりだったが、渋滞がきつければもう少し燃費を落とすだろう。燃費計測区間の合計距離は619.3kmで給油量は合計38.30リットル、実測平均燃費は16.2km/リットルだった。

次に居住感、快適性、ユーティリティについて。車室と荷室の容積の大きさはWR-Vのハイライトと言える。アジア市場では後席と荷室が狭いクルマはそもそもファミリーカーとして売れないという特質があるためか、その点については車格に対して申し分のないスペースが確保されていた。
特徴的に思われたのは後席が座面、シートバックとも、Cセグメント以上のセダン並みにクッション厚がたっぷり取られていること。その代償としてシートアレンジは貧弱で、後席を倒してもフラットスペースにはならない。後席に人を乗せる機会の多いインドの上級車ユーザーの支持を得るため座り心地の向上や長時間乗車時の疲労防止を優先させたものと推察される。


内装はデザイン、マテリアルとも簡素で、特に樹脂類の質感は全般的にヴェゼルに比べて低め。パーキングブレーキがサイド引き上げ式なのはWR-Vをノスタルジックなものに感じさせるポイントのひとつ。エアコンのエアアウトレットの開口面積が前後席とも十分に取られているのは南アジア対応車らしいところだ。


上質感はないものの居住性は前後席とも良好。WR-Vは窓面積にこだわるホンダには珍しくウインドウの上下幅が小さい。インテリアはブラック、グラストップやサンルーフの設定もないため車内は少々陰気臭いのではないかと思いきや、車内に乗り込むと窓の前後長が結構長いことと後席のプライバシーガラスの濃度が薄いことの合わせ技で開放感は結構高かった。

居住区の弱点は標準装備のオーディオのサウンドが貧弱なこととロードノイズがいささか大きめなこと。ホンダは4スピーカーオーディオの音を結構頑張るという印象があったが、このモデルに限れば音が聞こえるだけ上等というもの。ヘッドユニットのクオリティはどのモデルも似たり寄ったりなので、いくら何でもと感じたユーザーはスピーカーをグレードアップするのが吉だろう。

ロードノイズは舗装面がきれいなところではほとんど目立たないが、ざら目の強いアスファルト舗装や古いコンクリート舗装に差しかかると途端にノイズが高まる傾向があった。遮音が悪いというよりボディシェルが共振するようなノイズだったので、メルシートなどを要所に配すればかなり改善されそうなので、今後の改良に期待したい。
荷室容量はシートバックを立てた状態で458リットルと、Dセグメントミッドサイズセダンに近いキャパシティがある。荷室形状は縦横高さのバランス重視。荷室へのホイールハウスの張り出しが大きめなのでゴルフバッグなどの長尺物を横向けに複数搭載するのは難しいが、キャンプ、登山、マリンスポーツ用品を効率良く積むのには好都合そうだった。
