変動が激しい傾向の都議選

 都議選は変動が激しい傾向がある。2013年アベノミクスがスタートして間もなくの選挙は自民20議席増の59人、自公が全員当選の82議席。民主は28減の15議席。

 第三極みんなの党は維新の会との選挙協力を解消したが、初挑戦で7議席を獲得した。候補者ごとのローカル・アジェンダも容認、YouTubeライブ配信のコンテスト方式候補者公募も行った。私自身、声を枯らして全候補の応援に行ったし、手厚い支援もした。

 維新の会は1減の2議席。しかし、みんなの党の7人は、直後にみんなの党純化路線派4人と、維新合併派3人に分裂し、翌年の党解体の前哨戦となってしまった。

 恥を忍んで言えば、前年から続いていた党内クーデター計画を見誤った私の失敗の教訓である。権力抗争の中で温情主義は裏目に出るのだ。

 2017年の都議選は小池百合子知事が都民ファーストの会を作った。大勢の新人候補を擁立。私のベテラン秘書も新人の選挙指導に当たった。

 都ファは連合の組織内候補も抱え、公明と選挙協力を行った。結果は55人当選の大勝利。自民は34議席減の23人と大惨敗。小池氏は「新進党」(新政党・日本新党・公明党・民社党の切り貼り新党)の亡霊に取り憑かれたかのようになった。

小池百合子・東京都知事(写真:ⒸRodrigo Reyes Marin/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)小池百合子・東京都知事(写真:ⒸRodrigo Reyes Marin/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

議員が政党に縛られることの異常さ

 いわゆる地域政党は数多くあるものの、議会で多数を占めた代表例は大阪維新の会と都ファだけだろう。いずれも首長主導で「二元代表制」という理念にはそぐわない。

二元代表制のイメージ(図表:共同通信社)二元代表制のイメージ(図表:共同通信社)
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 二元代表とは、首長と議会議員を地方自治体の主権者たる住民が別々に直接選ぶ制度であり、首長・議会の両者に程よい緊張関係があることが前提だ(政治学者・大森彌)。首長選と議会議員選は有権者の投票行動が異なり、時には両者が全面対決になる不安定さも持ち合わせている。

 一方、日本国は一元代表で衆議院の多数派が総理大臣を選ぶ。国会議員は選挙で選ばれた全国民の代表として位置づけられる。

「代表」とは誰かの「代理人」ではない。代理人は委任者のために働く一方、代表は自らの思想と信念に基づいて行動する。中世ヨーロッパの身分制議会は僧侶や豪族貴族などの各身分から命令を受けた議員で構成された。近代議会制の根本理念は「命令委任の禁止」に他ならない。

 つまり、今風に言えば、議員は業界団体(農協、医師会、特定郵便局長会、経団連、労働組合その他)や選挙区の「手足」としてではなく、全国民のために働くことが求められる。それが国会議員に課せられた政治道義上の至上命令(義命)なのである。

 実は、この近代議会制の根本規範と、政党に支配され党議拘束を受ける議員との矛盾相剋は、かなり深刻なテーマにもかかわらず、政治改革の中でほとんど議論されない。

 タテマエ(規範)とホンネ(実態)で言えば、タテマエが消滅し、ホンネのみが残っている状態なのだ。車に例えると、ボディーがなくエンジンむき出し状態で車を走らせているようなものだ。その異常さに気づいていない。

 それどころか、国政政党の系列化が二元代表であるはずの地方議会で当然のように行われてきた。