今回の会見の場合、フジがどうしても馴染みのメンバーのそろった記者クラブ員を相手に会見をやりたかったのであるのなら、週刊誌記者などを対象にした会見を別に開けばよかった。もちろん2つの会見をいっぺんにやることも十分可能だったはず。古い広報体質が染みついている。

 会見には港氏以外の役員も質疑応答に加わった。長さは約1時間40分にも及んだが、ポイントになりそうな言葉はほんの僅かだった。

 件の部長はトラブルには関与していないと声明で断じた根拠を問われると、こう答えた。

「当該社員の聞き取りのほか、通信履歴、あまり全部言うと調査委員会の調査に支障が出るので申し上げられないが、もろもろを調べました。その結果、HPに掲載したものが正しく(週刊誌の)記事が事実でないということで、弊社の見解をお伝えしたということになります」

 歯切れが悪かった。やはり明確な根拠はないのである。

空疎で白々しい会見

 また、フジ側は中居と女性がトラブルになったことは一昨年6月のうちに把握したものの、それでも中居の出演番組『だれかtoなかい』を継続させた。これについては「唐突に終了することで、臆測が生じることを懸念して、慎重に終了のタイミングをはかっておりました」と答えた。

 この説明に無理を感じない人はいないのではないか。約1年半も終了のタイミングをはかり続けていたというのはあまりに不自然。この間、派手な番組PRも行っていた。

 加害者側である中居がトラブル前と変わらずフジの画面に登場する姿を見て、被害者側の女性はどう思っていたか。フジが中居を庇ったと考えられても仕方がない。

 会見はフジ側の「女性の人権や心身の安全を最優先にしたい」「調査委員会で明らかにしたい」という返答によってプロテクトされて、真相解明に近づく言葉はないに等しかった。

 女性の人権などを守ることは重要だが、部長の関与の有無を示す材料の提示などは出来たはず。やはり広報体制の古さを感じさせる。

 港氏は制作現場出身。『オールナイトフジ』(1983年)、『とんねるずのみなさんのおかげです』(1988年)などのバラエティ畑を歩んだ。有力子会社「共同テレビ」の社長を経て、2022年にフジの社長に就いた。テレビ界でバラエティ畑のトップは極めて珍しい。

 以前から局内の人物評はいい。「真面目な人。バラエティ畑だったが、浮ついたところがない」(フジ関係者)。ただし、社長就任の際には局内に驚きの声が上がった。共同テレビ社長は“あがりポスト”とされるからだ。

 70代という港氏の年齢を不安視する声も局内外にあった。動画配信の急速な伸びなどテレビを取り巻く環境は港氏の現場時代と大きく変わっているからだ。