電動化時代にS210を発表した2つの理由

 大きく2つの理由があると考えられる。

 1つ目は、ニュルブルクリンク24時間における実績を量産車に活かすため。

 そもそも、スバルのモータースポーツ活動は量産車への技術的フィードバックが前提だからだ。

 そして2つ目が、カーボンニュートラルに向けて新たなエンジン技術の可能性が見えてきたからだ。

 各国・地域で排気ガス・燃費規制の強化が進む中で、エンジン車についてはカーボンニュートラル燃料が実用化されていく可能性がある。

 スバルは国内で、スーパー耐久シリーズ・ST-Qクラスにカーボンニュートラル燃料を使うスポーツカー「BRZ」で参戦してきたが、24年シリーズ後半から「WRX S4」をベースにしたマシンに切り替えた。25年シーズンも「S4」で戦うため、商品イメージとして「S210」との親和性もある。

スーパー耐久シリーズでST-Qクラスに参戦する「WRX S4」をベースとしたマシン(写真:筆者撮影)

 では、今後のSTIハイパフォーマンス系モデルはどのように進化するのだろうか。

 Sシリーズにもハイブリッド車、またEVを採用するのだろうか。

 ハイブリッド車については、24年12月に発表した「クロストレック e-BOXER(ストロングハイブリッド)」に搭載する2.5L電動ユニットが気になるところだ。

 その点については、少し前になるが23年5月にスバル、トヨタ、マツダが都内で共同開催した、マルチパスウェイに関する説明会で、興味深い話があった。

 その場でストロングハイブリッドの実機が初公開されたので、筆者はスバル取締役専務執行役員でCTO(チーフテクニカルオフィサー)の藤貫哲郎氏に「これをベースにSTIやスポーツエンジンを開発するのか?」と聞いた。

ストロングハイブリッドについて説明する、スバルの藤貫哲郎CTO(左)(写真:筆者撮影)

 これに対して藤貫氏は「イエスともノーとも言えない」としたうえで、「そうした領域の議論を、まさにいま始めようとしているところだ」と開発の実状を明らかにした。

 また「個人的には、エミッション(排気ガス)規制の課題はあるが、エンジン車(でのハイパフォーマンス化)の可能性にも挑戦したい。また、そこに電動化を加える、さらには電動化を積極的に使うということも考えられる」と回答した。